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9コメント9件バルミューダ
スティーブ・ジョブズの死から10年。彼が世に送り出した製品は、多くの人たちに影響を与え、今もなお愛され続けている。なかでも『iPhone』は、私たちの生活を一変させ、新たな体験を生み出した。【写真】バルミューダがAppleのためにつくっていた製品 そんな中、彼に影響を受け、ついにはスマートフォンを作った人物がいる。家電メーカー「BALMUDA(バルミューダ)」の創業者・寺尾玄氏だ。 先日発売された『BALMUDA Phone(バルミューダ フォン)』は、ライトユーザーからヘビーユーザーまで巻き込み、良くも悪くも大きな話題となった。 今回は、バルミューダを語る上で欠かせないAppleの存在、そして何が失望につながり、賛否両論を巻き起こしたのか。『BALMUDA Phone』が描く未来について、考えていきたいと思う。<スマホ黎明期のリバイバル> 『BALMUDA Phone』は、バルミューダの新ブランド“BALMUDA Technologies(バルミューダ テクノロジーズ)“の記念すべき最初の製品だ。 キャッチコピーは、「コンパクト。そしてエレガント」。大型化が進むトレンドに反して、手に収まるサイズ感に仕上げ、バルミューダ製品らしい、上品な質感を追求した意欲作だ。 新たな体験を定義する独自アプリ、機能性と芸術性を両立したデザイン、スマートフォン黎明期を思わせるフォルム……。飽和したスマートフォン市場に、一石を投じる1台といえるだろう。 SIMフリー版の価格は10万4,800円、ソフトバンク版は14万3,280円と、昨今のスマートフォンの中では高額の部類に入る。スペック面では、同じ金額で同等以上のものが買えるため、SNSなどで否定的な声が少なくない。この点は、どこに価値基準を置くかによって、意見が大きく分かれそうだ。なお、詳しいスペックに関しては、BALMUDA Technologiesの公式サイトを確認してほしい。(参考:https://tech.balmuda.com/jp/phone/spec/)<スティーブ・ジョブズへの憧れ> 『BALMUDA Phone』を見て、『iPhone 3G』を思い出した方は多いのではないだろうか。寺尾氏は、本作の製品ページにて、スティーブ・ジョブズへの謝辞を述べている。*1それだけ、大きな影響を受けていることがわかるだろう。 それもそのはず、バルミューダ初の製品として登場した『X-Base』は、PowerBook用の冷却台だった。続いて登場した『Floater』は、クラムシェルモード時のMacBookを立てられる専用スタンドだ。ほかにも『Lift』と呼ばれる、MacBook向けのスタンドも発売している。 また、Mac関連だけではなく、iPhone関連にも力を入れていた。iPhoneをMacのテンキーにするアプリ『NumberKey』や、デスク上にiPhoneを置けるスタンド『SmartBase』(バルミューダが当時展開していた別ブランド「unite」の製品)なども発売している。 バルミューダは創業時からAppleとともに成長を続けてきた、といっても過言ではない。では、その集大成として登場した『BALMUDA Phone』に、寺尾氏が敬愛するApple製品のような驚きはあったのだろうか。<『BALMUDA Phone』の驚きはどこにある?> バルミューダが、創業時から大切にしているのが、ほかにはない体験だ。ある分野の常識を変え、新たな体験を届けることで、ユーザーを驚かせてきた。しかし本作は、これまでの製品に比べて、驚きが少ないように思える。 そしてそれは、発売を心待ちにしていたユーザーにも波及し、前述した価格を含めて賛否両論を巻き起こした。では、『BALMUDA Phone』が届けるべき、驚きとはなんだったのか。順当に考えれば、バルミューダ製品との連携だろう。 2013年にバルミューダは、スマートフォンと家電を連携する遠隔操作アプリ『UniAuto』をリリースしている。*2 (現在対応製品は発売していない) 本作にも『UniAuto』に近いアプリを搭載していれば、少なくともユーザーにとってわかりやすい驚きを届けられたかもしれない。特に、バルミューダ愛用者は、家電との連携を望んでいたはずだ。しかし、『UniAuto』の経験もあってか、本作での連携機能は実現しなかった。 IoTは、5Gの普及によって、さらに拡大していくことが予想されている。そこで現段階から、独自の連携を実現しておけば、他社との違いをより明確にできたはずだ。賛否両論ある端末価格についても、納得する意見が多かったのではないだろうか。 本作は、あくまでBALMUDA Technologiesの第1弾であり、継続的に製品を開発していく方向性だという。そこで今後、登場する可能性が高いのは、家の中ではなく、外における連携、つまりウェアラブル製品のように思える。 たとえば、スマートウォッチやスマートバンド、ワイヤレスイヤホンなどの製品がこれに当たる。前者は、独自アプリと親和性が高く活用しやすい。後者は、寺尾氏自らのルーツである音楽に関連したものであり、すでにワイヤレススピーカー『BALMUDA The Speaker』を発売していることから期待が持てる。 ウェアラブル製品は、バルミューダのデザインや哲学を反映しやすい点から、相性のいい分野だ。しかし、ウェアラブル製品は一般に普及しており、ありふれた連携や見慣れた機能では、新たな体験は提供できないだろう。 将来的に、スマートフォンやタブレットのような端末に力を入れるのか。それとも、ウェアラブルのような周辺機器に力を入れるのか。あるいは、独自アプリをバルミューダ以外のユーザーにも展開していくのか……。 家電との連携を新たな体験の柱にしなかった今、どんな驚きをユーザーに提供していくかが、BALMUDA Technologiesを左右するカギとなるだろう。<バルミューダを超える覚悟> ロゴは企業の顔であり、信頼の証でもある。バルミューダは、創業時から何度かロゴを変えたが、どれも微調整程度だった。しかし今回、BALMUDA Technologiesの立ち上げに合わせて、既存のモダンなロゴは引き継がず、サインのような新しいロゴを採用した。 楽器メーカーの「Fender」や、アンプメーカーの「Marshall」を想起させるロゴは、元バンドマンである寺尾氏のルーツを感じさせる。一見、バルミューダと認識できないのは痛いが、それだけの覚悟が見える転換といえるだろう。 ロックバンドの世界では、ファーストアルバムは名盤、といわれることが多い。BALMUDA Technologiesの『BALMUDA Phone』は、果たして名機となれるのだろうか。国産スマートフォン市場に、新たな風を巻き起こしてほしい。(Source)*1 https://tech.balmuda.com/jp/phone/story/*2 https://www.balmuda.com/jp/uniauto/https://www.balmuda.com/jp/https://tech.balmuda.com/jp/https://www.softbank.jp/corp/news/press/sbkk/2021/20211116_01/
菊池リョータ
最終更新:リアルサウンドカテゴリー
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