先日の発表では、すでに海外ではスタートしていた360 Reality Audioの国内における本格展開に合わせ、部屋を高音質の音楽で満たすという全方位スピーカーシステム搭載のワイヤレススピーカー「SRS-RA5000」「SRS-RA3000」が4月発売とあり、てっきりこのスピーカーが本命なのだろうと思い取材に臨んでいた。
実際にデモも体験し、確かに広がった感じで音が聴こえるスピーカーであることは分かったが、これが360 Reality Audioのすべてというわけではないようだった。もっと言ってしまえば、この2つのスピーカーは360 Reality Audioを体験する手軽な手法の一つであり、実際にはもっともっと奥深く、可能性の大きい技術のようだ。
4月16日より発売される、360 Reality Audio対応ワイヤレススピーカー(写真左がSRS-RA5000、右がSRS-RS3000)ワイヤレススピーカーのデモを体験する筆者そこについては、ヘッドフォンでの再生によって、その世界観を感じることができたのだが、そもそも360 Reality Audioとは一体何なのか。ソニー ホームエンタテインメント&サウンドプロダクツ事業本部 V&S事業開発部の横山達也氏、そしてライセンスビジネス推進室の澤志聡彦氏の二人に話を聞いた。
ソニー株式会社 ホームエンタテインメント&サウンドプロダクツ事業本部 ライセンスビジネス推進室 澤志聡彦氏(写真左)、V&S事業開発部 横山達也氏(右)--まずは簡単に、360 Reality Audioの概要について教えてください。
横山氏(以下敬称略):360 Reality Audioはソニーの立体音響技術を使った、立体的な音場を実現する新しい音楽体験です。360度に広がる全球に音源を配置し、それらを球状で動かすことが可能になるもので、クリエイターは創造性のままに、自由な音楽表現が可能になります。これまでステレオのスピーカーで音場を表現するものから、5.1chなどのサラウンドで表現するものへと進化してきましたが、さらに今回360度自由に表現できるものになりました。これはスピーカーで体験することもできますし、ヘッドフォンで体験することも可能です。
--いわゆるイマーシブオーディオというものとして、AURO 3DやDolby Atmos、またNHKの22.2chなど、さまざまな規格がありますが、それらとは異なるものなのですか?
澤志氏(以下敬称略):既存のものと異なり、球状の中央にいて音を聴くことができるシステムであるため、“下方向からも音が聴こえる”というのが他との大きな違いでもあります。制作環境においては、上部に5つのスピーカー、水平に5つのスピーカー、そしてボトムに3つのスピーカーという13chのフルレンジスピーカーがレファレンスシステムとなります。この環境で制作された音源を、たとえばスピーカーやヘッドフォンなどの再生環境で、クリエイターの制作意図通りにリアルに再現することで、これまでにない臨場感を提供しようというものです。
横山:我々としては、360 Reality Audio技術をモノラル、ステレオに次ぐ新しいフォーマットとして、他社にもライセンスし、幅広く訴求していきたいと考えています。
--今回、数多くのコンテンツを配信するとのことですが、いずれも360 Reality Audioを用いた立体音響になっているということなのですか?
横山:そのとおりです。すでに昨年より海外ではローンチしていたのですが、今回邦楽を含め4,000曲以上を国内で配信していきます。その配信は、まず3つの配信プラットフォームでストリーミングサービスとしてスタートさせます。
横山:「Amazon Music HD」はこれまでの配信コンテンツに加えて、360 Reality Audio対応のデータも配信される形で追加料金なしに利用できます。このAmazon Music HDにおいてはスピーカーでの再生が対象です。「deezer」は欧米では著名なサービスですが、4月16日より国内でもサービスをスタート。スピーカー、ヘッドフォン、スマホでの再生に対応します。2社から配信されるコンテンツ内容は、ほぼ同じものとなる予定です。一方、2社とはまったく異なるコンテンツを配信するのが「nugs.net」です。こちらは洋楽、かつ英語でのライブ専用の配信となるため、オリジナルコンテンツとなります。こちらもスピーカー、ヘッドフォン、スマホの3つで利用可能です。
--そのスピーカー、ヘッドフォン、スマホとは、どのような定義なのでしょう。
横山:スピーカーというのは、4月16日に発売予定の「SRS-RA5000」と「SRS-RA3000」の2つ。加えて、「Amazon Echo Studio」を含めた合計3機種が現時点の360 Reality Audio認定スピーカーです。またヘッドフォンはワイヤレスモデルや有線モデルを含め、33機種が対象です。
横山:スマホのほうはAndroid、iPhoneが対象です。それ以外にもNW-A100シリーズ、NW-ZX500シリーズというウォークマンも対応しています。スマホを通じた再生は、どのヘッドフォンでも可能ですが、頭部伝達関数を用いた処理を行なうため、認定ヘッドホンのほうが、より正確に音場を再現することができます。具体的にはスマホで両耳を撮影した上で、その人に最適化させるものです。ウォークマンの場合は、カメラ機能がないので、スマホに「360 Spatial Sound Personalizer」というアプリを入れ、そこで得たデータをウォークマンに流し込んで使う形となります。
360 Reality Audioは、全てのヘッドフォンで再現可能360度音場の高度な再現には“最適化”(両耳の形を撮影)が欠かせないアプリ「360 Spatial Sound Personalizer」を使った最適化の様子画面の指示に従って、頭の向きを変え耳を自撮りしていく--頭の形とともに、耳の形によって、音の聞こえ方は個人でずいぶん異なると聞きます。このアプリ「360 Spatial Sound Personalizer」は、3次元的に写真を撮るのではなく、顔の左右から写真を撮影するだけでいいのですね? またこの場合、スマホで結果を計算するわけではなく、クラウドで行なっているのでしょうか。
澤志:はい、数多くの人の頭・耳を撮影し、計測した結果があるので、写真を元にこれらと照らし合わせ、推定する形となっています。そのため、スマホ単体で照合することができないので、クラウドで処理しています。
--実際に試してみると、処理自体はとてもスムーズに、短時間でできますね。ヘッドフォンで体感する360 Reality Audioは確かに立体的で、上からも後ろからも、そして下からも音が聴こえてきて驚きました。
横山:国内ローンチに合わせ、音質向上を図りました。バーチャライズした際の不自然な響きをなくしたり、ボーカルがクリアでなくなる点を改善し、低音が濁るなどの部分を改善してきた結果、ここまでの音質に仕上がりました。
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360 Reality Audioは立体音場を実現する新しい音楽体験カテゴリー
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