「サイバーストーカー(ネットストーカー)」をご存じだろうか。サイバーストーカーとは、インターネットを通じて特定の人物につきまとうストーカーまたはストーカー行為のことだ。
国連の「デジタル開発のためのブロードバンド委員会」は、米国時間9月24日に「Cyber Violence Against Women And Girls(女性と少女に関するサイバー暴力)」と題する報告書を公開した。それによると、女性ネットユーザーの73%が過去に何らかのサイバー暴力の危険にさらされるなどしており、18~24歳の女性はストーカーやセクシャルハラスメント、身体的危害を受ける可能性が特に高いという。
SNSによって、誰でも対象に関するどんな情報も容易に得られるようになった。それにより、サイバーストーカーは増加し、自らストーカー化する例も見られる。サイバーストーカーの実態と問題点、防ぐために必要なことについて解説する。
サイバーストーカー行為は、ストーカー防止法第2条第1項第5号で禁止されている。しかし法律では、「無言電話、連続した電話・ファクシミリ、電子メール」がつきまとい行為とされており(警視庁説明ページ)、メール以外はサイバーストーカー行為として定められていない状態だ。しかし、実際はSNSによるストーカー行為が増えており、SNSでもストーカー規制法違反とされた例もある。
たとえば、2015年9月、滋賀県の男(51)が中学3年生女子(14)に対してLINEで「妹かわいいな」などと書いたメッセージを数十回送信。男は生徒の入浴時間帯や身体に関する内容のメッセージも送っており、ストーカー規制法違反で逮捕された。ストーカー規制法でつきまとい行為とされている「監視していると告げる行為」「性的羞恥心の侵害」に当たると考えられたためだろう。
女性がストーカー化した例もある。2015年4月、広島県の女子大学院生(23)が元交際相手を誹謗中傷する内容をインターネットの掲示板に書き込んで、名誉毀損とストーカー規制法で逮捕されている。女子大学院生は元交際相手の名前を掲載した上で、警察署に警告されていながら、16回も「女たらし」などと書き込んでいたのだ。
ネットやSNSを利用すると、容易に相手にメッセージを送ったり、書き込みなどで脅威を与えたりすることができる。加害者は容易にできる一方、被害者の受けるダメージは大きいのだ。
サイバーストーカーが増えたのは、SNSの普及により、個人情報を得やすくなったせいもあるだろう。たとえば、Facebookには友達かもしれない人を表示する機能があるが、その欄に「元彼女が出てきた」「離婚した元夫が出てきた」という話はよく耳にする。別れてもそのようなところから目に入り、情報を得るようになるケースも多い。
Twitterでも同様だ。多くの高校生たちが、プロフィール欄に本名や高校名、年齢などを明記し、アイコンを顔写真にしている。その上、アカウントに鍵もかけず、現在いる場所や写真などをリアルタイムで投稿したりする。Twitterアカウントを知っているだけで、誰からも行動が筒抜けになってしまうというわけだ。
こんな例もある。時々Twitterで、トレンドに「#RTした人を紹介する」などの文章が並んでいるのを見たことはないだろうか。中高生の間で、「#RTした人を紹介する」「#RTした人の印象を語る」など、RTしてくれた相手について紹介することが流行っているのだ。
漠然とした印象などなら問題はないが、中にはユーザー名や名前(年齢)なども紹介するケースが見られる。これらのツイートは、鍵をかけず誰でも見られる状態で投稿されていた。つまり、いくら匿名で利用していても、本名や年齢などが周囲に分かってしまう可能性があるというわけだ。
「#RTした人を紹介する」例。ツイートから名前や学年などが分かる例も多い最近炎上したある事件では、炎上した本人がTwitterで履歴書や免許証の写真、自分の住む建物写真や建物名、本名や所属などを包み隠さず投稿していた。それゆえ、炎上事件とともにそれらの個人情報がまとめページ内に掲載される羽目になってしまっている。
どの例も、TwitterやFacebookが、公開範囲を限定しなければ誰からでも見ることができ、検索対象にもなるということが理解できていないために起きている。サイバーストーカーの増加は、女子中高生たちが個人情報を惜しみなく出し続け、公開範囲も気にしていないがゆえと言えるだろう。
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