エンジン関連修理・整備 [2021.02.10 UP]
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バッテリーは、車の電力を確保するための重要な役割を担っています。かつてはよく「バッテリー上がり」という言葉を聞きましたが、近年ではバッテリーの高性能化や車自体の省電力化が進み、以前のように聞かなくなったのも事実です。とはいえ、近年の車でも条件によってはバッテリー上がりを起こすことがあります。突然のバッテリー上がりでも焦らずに対処できるように、ここではバッテリー上がりの原因や対処法などを徹底解説します。
この記事の目次バッテリーはエンジン始動のほかに、ヘッドライトやテールランプ、エアコンやカーナビなど、車内にあるさまざまな電子機器に電気を供給している部品です。バッテリー上がりとは、何らかの原因でバッテリーに蓄えられていた電気が少なくなり、エンジンが始動できなくなる症状を指します。エンジンを始動させるためには、セルモーターという部品をバッテリーからの電気で動かす必要があります。「バッテリー上がりが起きている=セルモーターを動かす電気が足らない」状態といえるため、何らかの対応をしてセルモーターに電気を供給しなければなりません。
バッテリー上がりを起こした際の代表的な症状は、「セルが回らずにエンジンがかからない」ことですが、他にも症状があります。簡単にいえば、電装品が作動しなくなるという症状です。例えば、以下のような症状が現れます。・パワーウィンドウが動作しない・メーター類が光らない・ヘッドライトやウインカーが点灯しない
バッテリー上がりを起こす原因は、バッテリーの「自己放電」と「寿命や故障」の2つに分けられます。そのなかでも、ほとんどは「自然放電」が原因です。車を運転しない間は、バッテリーを使っていないと思われがちですが、バッテリーはコンピューターやセキュリティシステムなどに対して、常に微弱な電気を供給しています。また、知らない方も多いようですが、バッテリーは何もしなくても少しずつ放電していきます。そのため、バッテリーのサイズや車載の電装品にもよりますが、1ヵ月ほど車を運転しないだけでもバッテリー上がりを起こしてしまうことがあります。自己放電以外にもバッテリー上がりを起こす原因は存在します。例えば、以下のようなことも原因となります。・エンジンをかけないでヘッドライトを点けたままにしていた・エンジンをかけないでエアコンを作動させた・エンジンをかけないで半ドアのままで室内灯が消えていなかった・バッテリーの経年劣化・寒冷地でバッテリーが弱っている(寒いとバッテリーの性能が落ちるため)・オルタネーターやレギュレーター(発電装置)の故障
バッテリー上がりに似た症状も存在しており、実はバッテリー上がりではなかったというケースもあります。原因によってはすぐに解決できるものもあるため、まずは以下のようなことが起きていないかをチェックしてみましょう。
バッテリー上がりに似た症状を起こすのは、セルモーターの故障が原因です。バッテリー上がりは、バッテリーにセルモーターを駆動させるほどの電気が残っていない状態をいいますが、この症状はバッテリーではなくセルモーターの故障で発生します。この場合はバッテリーがダメになっているわけではないため、車載の電装部品が問題なく動作するという点で見分けられます。
燃料のガソリンがない状態では、当たり前ですがエンジンは始動しません。JAFなどのロードサービスを利用するか、近くのガソリンスタンドでガソリン携行缶をレンタルし、ガソリンを給油するなどして対処しましょう。
ガス欠と似たような症状ですが、ガソリンが正常に供給されないとエンジンは始動しません。「セルは回るし、燃料も入っているのにエンジンがかからない……」。そんな場合はこの症状が疑われます。
AT車のみになりますが、乗用車はシフトレバーがパーキングの位置に入っていないとエンジンが始動できないように設計されています。そのため、エンジンを始動するときはシフトレバーがパーキングの位置に入っていることを確認しましょう。
エンジンを始動させようとしても反応がなく、ステアリングが左右に回せない状態のときは「ステアリングロック」が作動してしまっている可能性があります。ロックを解除するには、エンジンキーもしくはエンジンスタートスイッチをアクセサリ(ACC)状態にして、ステアリングを左右どちらかに回せばOKです。ロックを解除したあとは、いつもどおりエンジンを始動してみてください。
それでは、バッテリーが上がってしまったら、どう対処すべきでしょうか。バッテリーが上がった原因が、ヘッドライトの消し忘れなどの人為的なミスであり、なおかつバッテリーがまだ新しければ、バッテリー交換は不要な可能性が高いです。自走しているうちに、バッテリーが充電されて復活するでしょう。バッテリーが古く寿命に近ければ、ディーラーやカーショップへ行ってバッテリーの交換をしてください。根本的な原因がバッテリーの劣化であれば、バッテリー交換が適切な対処法になりますが、出先などで応急処置をしなければならない場合もあるかと思います。そんなときは、以下の方法で復旧を試してみてください。
友人や知人が近くにいた場合、救援車となる他の車のバッテリーの電気を借りて、バッテリー上がりの車のエンジンを始動することができます。ただし、バッテリーとバッテリーをつなぐ、一対(黒と赤)のブースターケーブルが必要です。ケーブルをつなぐ順序や方法を間違えるとバッテリーがショートしたり、最悪の場合バッテリーが爆発したりと危険です。そのため、必ず適切なつなぎ方を知っている人がいる場合のみ実施してください。ちなみに、バッテリー上がりの車のバッテリーが12Vなら、救援側も必ず12Vでなければなりません。
他車の電気を借りなくても、ジャンプスターターを使えばエンジン始動が可能です。ジャンプスターターというのは、大きなモバイルバッテリーをイメージするとわかりやすいかと思います。前述の救援車の代わりに、ジャンプスターターの電力でセルを回す方法です。ジャンプスターターにも、以下のようにいろいろな種類があります。・リチウムイオン電池タイプ・リチウムポリマー電池タイプ・リチウムマンガン電池タイプ・鉛電池タイプただし、それぞれに特徴があり、大きさ、価格、電力容量などに違いがあります。価格重視で購入してしまうと、供給される電力が足りずにエンジンがかからない場合があるため、注意してください。
周りにすぐ駆けつけてくれる友人や知人がいない場合は、JAFなどのロードサービスを呼んで対応してもらうことも可能です。JAFの場合、会員は無料でロードサービスを受けられるため、自分が会員かどうかを確認しておきましょう。
ケーブルを接続する順番と方法は以下のとおりです。1.バッテリーの上がった車のプラス(赤)2.救援車のプラス(赤)3.救援車のマイナス(黒)4.バッテリーの上がった車のマイナス(グランド:バッテリー端子ではなくエンジンの金属部分)上記の順序でつないだら、救援車のエンジンをかけて若干アクセルを踏み、エンジン回転数を高めてください。次に、バッテリー上がりの車のエンジンを始動します。エンジンがかかったら、逆の順番でブースターケーブルを外しましょう。バッテリーにケーブルを接続する順序が覚えにくい場合は、「つなぐときはプラスから、外すときはマイナスから」と覚えておくとよいでしょう。
前述のとおり、ジャンプスターターを使うと救援車のバッテリーをつながなくとも、自力でエンジンを始動できます。カバンやトランクに入るサイズのものもあり、常備しておくと万一の際に重宝する実用性の高い便利なグッズです。また、車のエンジンをかける用途以外にも、スマートフォンやタブレットなどに電源供給ができるタイプもあり、おすすめです。
まず、ジャンプスターターのバッテリー残量をチェックして、エンジンを始動するだけの容量があることを確認してください(必要な容量については、ジャンプスターターの説明書を見て判断してください)。容量が確認できたら、以下の手順で使用しましょう。1.ジャンプスターターからのプラスクランプ(赤)をプラス端子に接続します。2.マイナスクランプ(黒)をマイナス端子に接続します。3.セルを回してエンジンをかけます。4.取り外す際は、接続とは逆の順番でケーブルを外します。こちらも救援車とケーブルをつなぐ場合と同じく、「つなぐときはプラスから、外すときはマイナスから」の手順で必ず作業してください。
エンジンの排気量や圧縮比によっては、容量不足で十分な電力供給ができない可能性があります。バッテリーの残量ももちろん大切ですが、そもそも自分の車のエンジンをかけるだけのスペックを持っているバッテリーかを確認しましょう。また、エンジンの始動には大きな電力を必要とします。そのため、各ジャンプスターターの取り扱い説明書を見ながら、決められた1回あたりのクランキング時間を守りましょう。1回で始動しない場合も、クランキングの間隔や最大何秒程度までクランキングできるのか、メーカーの指示に従うようにしてください。
上記はあくまでも応急処置となり、バッテリーの寿命でバッテリー上がりを起こしている場合は交換が必要です。その際、自分でバッテリー交換をできるよう、以降では具体的な手順を紹介します。
バッテリーと一口にいっても、容量やケースのサイズ、端子の位置などはさまざまです。必ず自分の車に指定されている形式と同じものに交換しましょう。安いからといって形式が違うものを購入すると、取り付けられないばかりか車両火災の原因となる恐れもあります。なお、バッテリー内部のバッテリー液は希硫酸です。目に入ると失明したり、やけどや衣服が損傷したりする恐れがあるため、取り扱いには十分注意を払ってください。また、バッテリーはショートさせると発火や破裂する恐れがあります。
バッテリー交換には以下の道具を用意し、バッテリー液が手に付いたり、目に入ったりしないように作業してください。・ゴム手袋・保護メガネ・スパナ(ターミナルを外すため)
金属のボディに触れて静電気を逃がしてから作業を行ないます。1.エンジンを止め、キーを抜きます。2.端子カバーが付いていれば外します。3.マイナス側ケーブル端子を外します。4.プラス側ケーブル端子を外します。5.バッテリーを固定する取付け金具を外します。6.バッテリーを台座より取り外します。このとき、ケーブル端子が汚れていたり、白い粉を吹いていたりしたら、ワイヤーブラシなどで清掃してください。
取付ける際は以下の順序で作業します。基本的には取り外す際と逆の手順です。1.新しいバッテリーを台座に乗せて、取付け金具で固定します。2.プラス側ケーブル端子をバッテリーのプラス端子に取付け、しっかりと固定します。3.マイナスケーブル端子をバッテリーのマイナス端子に取付け、しっかりと固定します。できれば錆止めのグリスを端子に塗布してください。4.端子カバーがある場合は元通りに取付けます。
バッテリーを交換中、コネクターを外すと車両電子機器のメモリーデータが消去される可能性があります。バックアップ電源を使うことで、データを保存し保護することができるため、心配な方は購入されることをおすすめします。
バッテリーは有毒で危険な希硫酸や鉛を使用しており、廃バッテリーを一般の廃棄物として処分することは法律で厳しく禁じられています。ガソリンスタンドやカーショップなど、バッテリーの購入先や取扱い店に処分できるか相談して、放置せず適切に廃棄してください。もし少しでも作業に不安を感じたり、バッテリーの廃棄が面倒に感じられたりする場合は、プロにすべて任せるのが安心です。グーネットピットでは全国の整備工場を網羅しています。バッテリー交換から日頃のメンテナンスまで対応しています。https://www.goo-net.com/pit/
単に「バッテリー上がり」といっても、複数の似たような症状や原因があるため、判断するのが難しいと感じる場合もあるでしょう。その際は、JAFなどのロードサービスを利用すると安心です。また、バッテリーは取り扱い方を間違えると非常に危険です。不安な場合は無理にセルフで交換しようとせず、ディーラーやカーショップなどの知識のあるスタッフに修理を依頼することをおすすめします。お近くの整備工場をお探しの際は、ぜひグーネットピットをご活用ください。https://www.goo-net.com/pit/
ライタープロフィール
グーネットピット編集部車検・点検、オイル交換、修理・塗装・板金、パーツ持ち込み取り付けなどのメンテナンス記事を制作している、自動車整備に関するプロ集団です。愛車の整備の仕方にお困りの方々の手助けになれればと考えています。
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