BT-300は、エプソンのスマートグラスとしては第三世代である。世代間の違いは、主にディスプレイのクオリティだ。
正直なところ、BT-100・BT-200に、筆者はあまり強く惹かれなかった。映像が暗く不鮮明であったため、常時シェードで外光を遮断する方が使いやすく、そうすると「シースルー」の良さがスポイルされてしまっていた。コントラストも低く、ぼやけも感じた。
だが、BT-300ではそれが「劇的に」改善した。デバイスを有機ELベースのものに変えた結果、輝度が劇的に向上したからだ。ディスプレイユニットはメガネの左右に分かれて配置されており、光をハーフミラーにあてて目に導く構造になっている。有機ELベースになってバックライトが不要になった結果、ここをコンパクトにできたのも、デザイン上大きなポイントだ。
ディスプレイは横にあり、そこからハーフミラーへと光を導いて目に照射ディスプレイ稼働中に横から見ると、若干反射している状況が見えるさて、ではどのくらい鮮明に、見えやすくなったのか?
残念ながら、実際にヘッドセットをかけてみた人でないと、その価値が分かりづらい。「ヘッドセットをかけた状態の目」でのみうまく表示されるようになっているので、写真などでその様子を客観的にお見せするのが難しいのだ。
一応がんばって撮影してはみたが、「なんとなく」わかる程度でしかない。しかし、輝度の高さは分かっていただけるのではないか、と思う。
表示をなんとか写真に撮ろうとしてみたが、これが限界だった。輝度の高さ・エッジの鮮明さが「なんとなく」伝わるだろうかそこで「あくまでイメージ」だが、こちらで映像をのぞきながら、合成画面を作ってみた。もう少し「強い光」の印象はあるのだが、本当にこんな感じだと思っていただきたい。
あくまで「イメージ」としての合成画面。ヘッドセットがしっかりとした位置に落ち着いていると、本当にこんな感じに見える。大きいのは、輝度と透過度が大幅に向上したことだ。今回はほとんどの時間、シェードをかけることなく使ってみたが、それでも背景が机などの暗めのものであれば、まったく問題なく見えた。もちろん、暗い方が「暗闇に映像が浮かぶ」感じになっていいが、なにより日常的な空間で使える、というところに魅力を感じた。
エプソンのリリースより。透過度が上がったため、ARでの視認性・自然さがより高まったディスプレイとしては、1,280×720ドットのもので、画角も対角約23度で、広くはない。VR用のHMDのように、視界全体を映像で覆う機器ではない。いわゆる360度映像も見られるのだが、視界全体を覆うわけではないので、迫力・没入感には欠ける。一方で解像感はなかなかに高く、画質も良いため、ウェブの文字を読むにも問題はない。かけながら数時間仕事をしてみたが、確かにこれなら実用的に使える、と思った。個人の手に入る価格のものでは、ここまでのシースルー型ディスプレイは他にない、と言えるくらいの品質だ。
ただし問題は、「それはきちんと目に映像が入っている時」に限られる、ということである。ヘッドセットが少しでもズレると、映像はいきなり見づらくなる。要は、スイートスポットが狭いのだ。それをわかった上で、きちんとつける必要はある。そこでは重さがまだ問題になるし、メガネとの親和性も問題になる。
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