「メタバースはディストピアの悪夢です」──。「Pokemon Go」などのAR(拡張現実)ゲームで知られる米Nianticのジョン・ハンケCEOは8月10日(現地時間)、ここのところ再浮上しているメタバースについて、このような警鐘を鳴らし、Nianticが考える「現実世界のメタバース」について説明した。
メタバースという用語は1992年に出版されたニール・スティーブンソンのSF小説「スノウ・クラッシュ」に由来し、映画「レディ・プレイヤー1」では「オアシス」として登場する仮想世界だ。ヘッドセットなどを装着することで現実と離れた仮想世界に没入し、他者と交流する。「あつまれどうぶつの森」も広い意味でメタバースといえる。
米Facebookが7月、数年前から取り組んでいるAR/VRのプロジェクトのための新たな部署を、「メタバース実現に向けたMetaverse product groupとする」と発表したことなどをきっかけに、メタバースという用語が業界で再浮上した。
ハンケ氏は「Nianticは、SFヒーローが仮想世界に逃避するような世界にならないよう努力する。テクノロジーを使って拡張現実の「現実」に寄り添うことができるはずだ」という。
同氏は、オンラインではリアルな人間同士では許されないような行動が許容され、アルゴリズムによって人々がフィルターバブルに押し込まれ、社会が分断されていると語る。
Nianticが目指す「現実世界のメタバース」は仮想世界ではなく現実の世界とデジタルの世界を融合させるものだ。ハンケ氏は3月の「Microsoft Ignite 2021」で、HoloLens越しにリアル世界でピカチュウを連れ歩き、他のプレイヤーと交流するデモを披露した。
自分のポケモンを連れて他のプレイヤーと会話するハンケ氏(右)同社はこの現実世界のメタバースの実現に向けて、現在米Qualcommと提携し、ARスマートグラスを開発している。このプロジェクトはまだ社内での研究開発段階だが、将来的にはオープンプラットフォームにしていく計画という。
同社は5月には、2018年に「Niantic Real World Platform」として公開したARプラットフォームを「Niantic Lightship」と改称し、開発者に参加を呼び掛けている。
Lightshipの公式サイトLightshipでは、世界の3Dマップの構築を目指している。コンピュータのためのこの3Dマップと、位置情報やコンテンツアンカリングを使うことで、世界のどこででもリアルタイムのAR体験を実現できるようにしたいという。
ハンケ氏は「未来は私たちが作るものであり、自分たちが住みたい、そして次の世代に伝えたいと思う未来を作るために時間とエネルギーを費やしています」と語り、Nianticの未来に参加するよう開発者や企業に呼び掛けた。
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