エンジン関連パーツ交換 [2020.11.18 UP]
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タイミングベルトとは、エンジンに関連した部品の一つです。寿命を迎えるとエンジントラブルに発展するため、適切なタイミングでの交換が必要になります。しかし、タイミングベルトに馴染みがないという方も多いため、具体的な交換時期や判断方法がわからず、そのまま放置してしまっている方もいるのではないでしょうか。そこで今回は、タイミングベルトの役割・位置・仕組みといった基本的な内容から、交換のタイミングや費用に関する情報をご紹介します。
この記事の目次タイミングベルトとはゴム素材でできているベルト状の部品を指しますが、どのような場所にあり、どのような役割を持っているのでしょうか?まずは、タイミングベルトの基本的な情報を確認してみましょう。
タイミングベルトは、エンジン内部のクランクシャフトとカムシャフトを連結する位置に存在します。カバーの中に隠れている車が大半なので、エンジンルームを見渡してもタイミングベルト本体を目視できることは少ないでしょう。ただ、カバーの中に隠れていてもエンジンの向き、もしくは前輪駆動・後輪駆動のどちらに該当するのかがわかれば、タイミングベルトの大まかな位置把握は可能です。・縦置きエンジン(後輪駆動車に多い):エンジンの直前・横置きエンジン(前輪駆動車に多い):エンジンに向かって左側※すべての車が必ずしも上記表示位置にあるとは限らないので注意してください
タイミングベルトの役割を簡単に説明すると、エンジンの規則的な回転運動に必要な部品(クランクシャフトとカムシャフト)同士のタイミングを連動させることです。・クランクシャフト:ピストン動作を回転動作へと変換する部品・カムシャフト:吸気・圧縮・燃焼・排気の4工程あるうち、吸気と排気のタイミングでバルブを開閉する部品エンジンの規則的な回転運動には、4工程(吸気・圧縮・燃焼・排気)を適切なタイミングで繰り返す必要があります。4工程のうち、吸気と排気を担うカムシャフトの動きを支えているのが、タイミングベルトでつながっているクランクシャフトです。タイミングベルトは、クランクシャフトの動力を規則的にカムシャフトへと伝えることで、カムシャフトがバルブを適切なタイミングで開閉するサポートをしています。上記のような役割から、部品同士のタイミングを連動させるゴム状のベルトは、「タイミングベルト」と呼ばれるようになりました。
タイミングベルトは、先ほどから触れているとおりゴム製のベルトです。ただし、単純にゴムのみでできているのではなく、ナイロンやグラスファイバーといった繊維のワイヤーが入っており、切れにくくなっています。また、タイミングベルトの内部には、コマ(各シャフトのプーリーと噛み合うための突起)が付いているのが特徴です。コマがそれぞれのプーリーとうまく噛み合うことで、クランクシャフトとカムシャフトの連動時差を防いでいます。タイミングベルトのコマとプーリーに関連する情報として、周囲の噛み合いにも注目してみましょう。タイミングベルトは、前述のとおりカムシャフトのプーリー(カムプーリー)と、クランクシャフトのプーリー(クランクプーリー)に噛み合っているものです。しかし、タイミングベルトは上記の他にも、ウォーターポンプやオートテンショナー、オイルポンプなど、エンジン内部にある他のプーリーとも噛み合っています。タイミングベルトがダメージを受ければ、エンジンに関わる大部分は停止してしまいます。タイミングベルトが切れるなどした場合には、エンジンブローする可能性が極めて高いということです。
タイミングベルトに類似する部品として、メンテナンスフリーの強度・静粛性が増したタイミングチェーンも登場しています。タイミングチェーンは、タイミングベルトの欠点である劣化寿命をカバーできるのが特徴です。もともとタイミングチェーンは、タイミングベルトが登場する前から存在していました。しかし、当時のタイミングチェーンはハイコスト・騒音・伸びやすいなどの欠点が多く、ひと昔前まではそれらの欠点をカバーするタイミングベルトが主流となっていたのです。技術の発展により、メンテナンスフリーの新しいタイミングチェーンが登場したことで、タイミングベルトからタイミングチェーンへと主流が変化しています。
タイミングチェーンに需要が切り替わりつつありますが、タイミングベルトを装着している車は多く存在しています。タイミングベルトの寿命や劣化の原因など、交換の目安となる情報を確認してみましょう。
タイミングベルトの平均寿命は、10年(走行距離10万km)が目安といわれています。ただし、これは1年1万km走行を想定した算出結果なので、必ずしも10年で寿命を迎えるわけではありません。どのような状況でどのような乗り方をしているのかによっても、タイミングベルトの寿命は変わります。例えば、山道や悪路の多い場所で負荷のかかる運転を続けた場合、ノーマルコンディション(負荷の少ない走行)と比べて、劣化スピードが加速する可能性も否定できません。また、排気量が異なる軽自動車と普通自動車でも、劣化速度に差が出てきます。軽自動車と比べて普通自動車はエネルギー量が大きいため、タイミングベルトに負荷がかかる傾向があるのです。「○○の車は何年以上も交換していなかったから……」「以前の車は○○年間、乗っても大丈夫だったから……」といった情報は当てにならないため、十分に注意しましょう。
急発進・急加速・急停止といった負荷の大きい運転がタイミングベルトの劣化につながるケースも多いですが、別の要因が絡んでいるケースも珍しくありません。さまざまな要因が考えられますが、以下ではおもに考えられる3つのケースを解説します。
パッキンなど、エンジンのゴム部品が劣化していると雨天の走行時に水が浸入し、劣化が加速する恐れがあります。特に、冠水した道路の走行はエンジンが水に触れる可能性が高いため、製造年数の古い車は注意しましょう。
エンジンオイルが古いまま使用し続けるとエンジンの動きが鈍くなり、タイミングベルトへの負荷が大きくなる傾向があります。エンジンオイルは適度に点検・交換をするようにし、古い状態で使用しないように注意しましょう。
エンジンは動かすと熱を帯びるため、冷却液の存在が欠かせません。しかし、冷却液が少ない状態では十分にエンジンが冷えず、熱によってタイミングベルトのゴム劣化が早まります。オーバーヒートした経験がある方は、タイミングベルトに大きな負荷がかかった可能性が高いので、一度点検に出すことをおすすめします。
タイミングベルトが切れる前兆を感知するのは、極めて難しいでしょう。たとえ、タイミングベルトが切れる前に異音を発したとしても、交換する暇もなく減速直後にエンジンが止まるケースがほとんどです。問題なく走行できている状況でエンジン付近から異音を感知した場合は、タイミングベルトではなく、ファンベルトやエアコンベルトから音が出ている可能性があります。ただし、エンジン内部は素人が簡単に確認できる場所ではないため、異変に気付いた段階で早急に点検を依頼しましょう。安心・安全を優先するならば、異変を感知していなくても日頃から定期的に点検を行ない、車の状態を正確に把握しておくことが大切です。
タイミングベルトを交換せずに寿命を迎えると、エンジンが停止してしまいます。エンジン内部の損傷・破損の可能性も高くなり、修理費もグッと跳ね上がってしまうこともあるでしょう。道中の急停止は大きな事故にもつながるため、タイミングベルトが寿命を迎えるよりも前に交換するのが理想です。点検時に「タイミングベルトの交換」といったワードが出た場合は、詳しい情報を聞いてから早めに対処しておきましょう。
タイミングベルトの交換費用は、一般的に高いことが多いです。ここからは、タイミングベルトを交換するのにどれくらいの費用がかかるのか、どのような方法で交換できるのかを確認していきましょう。
タイミングベルトのおもな交換方法の流れは、以下のとおりです。1.交換用のタイミングベルト、各所シール類、整備書などを準備する2.バッテリーのマイナス端子を取り外す3.タイミングベルトが見えるようにカバーを取り外す4.タイミングベルトにオイルや水が付着していないか、切れていないか確認する5.オイルや水が付着している場合は漏れ止めをする。切れている場合は次のステップに進む6.各プーリーと旧タイミングベルトにマーキングして、位置ずれを防ぐ7.旧タイミングベルトを取り外す8.旧タイミングベルトのマークをもとに、新タイミングベルトにも同じ位置にマーキングする9.クランクシャフトとカムシャフトを調整しながら、1番ピストンを圧縮上死点に合わせる10.(9)の状態を維持して、マーキングを頼りに新タイミングベルトを取り付ける11.手で4回~5回ほど回転させて、干渉がないかを確認する12.何も異常がなければ取り付け完了簡単そうに見える交換作業ですが、ギア1コマの狂いもなく設置する必要があります。さらに、エンジン周りの部品に触れることも多いため、交換時のリスクを考えると自分で行なうよりも、業者へ依頼するのがおすすめです。ディーラーやカーショップなど、身近な店舗でタイミングベルトの交換を依頼することができます。気になる方は一度、最寄り店へ相談してみるのがよいでしょう。
タイミングベルトの交換にかかる費用は、大きく分けて2つあります。・タイミングベルト本体:5,000円程度・タイミングベルト交換工賃:3万円~5万円程度(材料代込)タイミングベルト本体は、比較的安価で入手することができます。しかし、タイミングベルトの交換工賃を含めると、3万円以上はかかるとみておきましょう。エンジン周りを解体していくため、タイミングベルトの交換は他の整備工賃よりも割高になることが多いです。また、以下の場合は工賃がさらに高くなることがあります。・タイミングベルトが切れている・タイミングベルトの寿命とともに関連部品も劣化しているタイミングベルト自体が切れている場合、他のエンジン部品も大きなダメージを受けている可能性が高く、工賃込みで合計8万円~40万円ほどの交換費用が発生することがあります。仮に切れていなかったとしても、エンジンの大部分を占めているタイミングベルトが寿命を迎えているとなれば、プーリーが噛み合っている他の部品も寿命である可能性が高いです。安全のために、業者からウォーターポンプやサーモスタットなどの交換を推奨されるケースがあることも覚えておくとよいでしょう。
トータルコストで考えるのであれば、廃車を検討するのもよいでしょう。平均寿命10年(走行距離10万km)という数字は、修理部品や修理費用が増えるほか、数年後には自動車税や自動車重量税の重課が始まるため、車にとって一つの節目ともいわれています。・自動車税の重課:登録年数(初年度検査年)から13年経過した、ガソリン車(ハイブリッド車を除く)とLPガス車、同じく11年以上経過したディーゼル車が対象・自動車重量税の重課:登録年数(初年度検査年)から13年以上を超えた車と、同じく18年以上を超えた車が対象10年を経過した車は、基本的に買い取り価格が上がりません。仮に、タイミングベルトを取り換えたとしても査定額がプラスになる可能性は低いため、大きな出費負担だけが残ってしまいます。経年劣化によりタイミングベルト同様、他の部品についても交換したほうが良いものが増えるため、交換費用が気になる方は寿命を機に手放すという方法も検討してみてはいかがでしょうか。
タイミングベルトは、車の動力に欠かせない部品の一つです。普段はカバーに覆われており、わずかなズレも許されない仕組みになっているため、素人が簡単に修理・点検できるものではありません。とはいえ、平均寿命10年(走行距離10万km)という情報を頼りに、点検をせず放置してしまうのはとても危険です。万が一、タイミングベルトが切れてしまうと、他の部品へのダメージにもつながります。ゴム素材で作られているタイミングベルトは、車の乗り方・扱い方によって劣化のスピードが異なります。車に長く乗り続けるためにも、最寄りのディーラーやカーショップでの定期的な点検を心がけましょう。
ライタープロフィール
グーネットピット編集部車検・点検、オイル交換、修理・塗装・板金、パーツ持ち込み取り付けなどのメンテナンス記事を制作している、自動車整備に関するプロ集団です。愛車の整備の仕方にお困りの方々の手助けになれればと考えています。
この人の記事を読む車検・点検、オイル交換、修理・塗装・板金、パーツ持ち込み取り付けなどのメンテナンス記事を制作している、自動車整備に関するプロ集団です。愛車の整備の仕方にお困りの方々の手助けになれればと考えています。
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