読者の皆さん、ゲームサントラライフは楽しんでいますか?「いきなり何を言ってるんだ」と言われるのはゲムスパあるあるではありますね。本記事では、先日のSteam導入記事第2回で紹介した「Steamのサウンドトラック」について、Steamで購入できるサントラリスト(リンク先外部サイト)を編纂しており、元からのゲームサントラマニアでもある筆者が、現状の野放しなSteamサントラに事例などを交えて一家言述べていきたいと思います。『ブレスオブファイア』シリーズのサントラとかもちゃっかり売ってるんですよねSteamきっとユーザーだけでなく、パブリッシャーの皆様も大満足なポイントの紹介はこの下から。良いサントラとは何か?いきなりの本題です。まず、前提として、筆者はもちろんSteamのサントラだけでなく実盤もそれなりに所有していますが、場所を取ってしまう実盤は物理的なスペースの関係でそろそろ集めることが難しくなってきました。さらに初期のCD盤に至っては、一説によれば寿命が近づいている、過ぎてしまったものも少なくないとされています。それを抜きにしても過去の作品のサントラは様々な大人の事情でプレミア価格……ということも少なくありません。一方で、近年ではデジタルリリースが増えたことで、実盤の意義は多くのユーザーにはコレクションパッケージ的なものとなってしまっており、実際に筆者のサントラ収集の軸足もデジタルへ向いてしまっています。極限の音質を求めるような方はともかくとして、同様の読者の方は少なくないことでしょう。ですが、実際のところ、デジタルリリースにおけるサントラにはしっかりとした定義がされておらず、各社の配信スタイルはバラバラで統一されていません。特にSteamではその傾向が非常に顕著で、筆者がサントラ情報をまとめだしたのも買って損をするユーザーを失くしたいという一心でした。では、損をしないサントラ、「良いサントラ」とはどのようなものなのでしょうか?下記が筆者の考える「良いサントラ」の定義になります。ビットレートがMP3なら320kbps水準以上であることCDと同等以上の音質であることは絶対条件でしょう。これには実盤との差異をあまり設けてほしくないという心情的な物もありますが、同意していただける読者の方も少なくないと思っています。若干技術的な話になりますが、MP3へのエンコードの際には、人間の可聴域で聞き取れない周波数をカットして圧縮しているため、ビットレートに応じて、人間には聞き取りづらい部分が失われていきます。昔(もう10年以上前の話です)はデジタルダウンロードが主流でなかったため128kbps~192kbpsが全盛でしたが、192kbpsでも音質がやや劣るというのが当時の評判でした。現代ではエンコーダーソフトや機器も洗練され、192kbpsでもかなりの音質になっているのですが、それでも320kbpsと比較すると音域の広がりなどにやはり差異を感じるような気がしています。筆者も歳を重ねたことで、この感想には当時ほどもう自信はないのですが、やはり提供するのであれば320kbps以上である方が、後述するような問題は起きづらいでしょう。もちろん可逆オーディオ(FLACなど)が並行して提供されれば良いのですが、ライセンスや転載の問題を考えれば、サントラ自体がある程度の値段であれば、そこまでいうのは若干贅沢ではないかなと筆者は考えています。タグとジャケットアートが完備されていること以前の記事ではSteamのサントラは外部ソフトで管理することを推奨しました。この際、ジャケットアートとタグがあり、何のサントラか直ぐに分かることは大切なことでしょう。ラックに並べた際のコレクション欲にも似たものですが、画像を見てもらえば分かるように、再生の際もジャケットのお陰で直ぐに目当てに辿り着きます。また、しっかりとしたタグがあることでアーティストが誰か、何の曲かという把握もできるのはありがたいものです。ユーザー側で独自につけることは不可能ではありませんが、そのための手間もあれば、公式の表記に勝るものはありません。サントラとしてマスタリングされていることこれは、実のところデジタルやSteamのサントラに限った話ではなく、「サウンドトラック」をユーザーに提供する上で実は一番重要な部分です。ゲームで使用している曲のファイルをそのままサントラの実盤として提供した事例が音ゲータイトルでも過去に実際あったりしますが、双方にとって残念な結果に終わることは少なくありません。「サウンドトラック」はユーザーが一連の楽曲として各トラックを楽しむものなので、それを想定していない作りでは、メーカーがせっかく頑張ってリリースしたサントラもユーザーにとっては音量が一定でなかったり、曲がぶつ切りになってしまっていたりの不満だらけです。「逆に全てがそこまで出来ているサントラなんてあるのか?」と聞こえてきそうですが、存在します。カプコンが近年Steamで配信しているサントラは上記のポイントは全て抑えた上で、それ以上にしっかりとした中身になっており、長くSteamで販売されているサントラを見てきた筆者でも舌を巻いたほどです。日本語タグと英語タグの別フォルダ化、歌詞タグから、普段はあまり使用しないようなマイナータグまで充実しており別格と言っても良いでしょう。流石にここまではやりすぎですが、ここまでしっかりとした中身を提供されると今後も安心して同社のサントラを購入できます。かなり難しいですし、贅沢ですが、カプコンの現在の提供スタイルが基準になってくれれば筆者も非常に嬉しいところです。重ねて言いますが、ここまでしっかりとした提供を行っているサントラは他にまずありません。販売の際に気をつけなければいけない例ライセンス問題この現代、一般的に楽曲をサウンドトラックとして配信するためには、音源制作者の許諾(ライセンス)がサウンドトラック向けにも必要です。「何を当たり前のことを、普通は許諾がある音源をゲームに用いているものだろう」と思われる読者の方もいるかもしれませんが、その限りではありません。ゲームとサントラで許諾が別ということだってあるのです。その方向性での筆者の中での例としての代表格は『はーとふる彼氏』です。コレクターズエディションを購入した場合サントラが付属するのですが、本作品ではほぼ全てロイヤリティフリーの楽曲を使用しているのが、疑惑を生んでいます。ロイヤリティフリーとは条件に沿うことで使用できる素材のことで、写真ならぱくたそなどが非常に有名です。本作品の話に戻ると、本作のサントラに収録されている楽曲の大半は、それぞれの規約上定められた、音源を主体とした形での再頒布に大きく抵触しています。Steamのフォーラムでも2015年段階から指摘が行われておりますが、パブリッシャーからは一切の返答がないままに、現時点でも未だに配布されています。もちろん、楽曲作者に個別で許諾を得ている可能性はあるのですが、そうであるならばその旨を一言伝えればいいだけであり、最悪の場合はパブリッシャーも原作者も把握していない可能性もあります。そのような疑惑を残したままにしておくのは良いやり方とは言えません。もちろん本当にライセンス違反であれば言語道断です。なお、本作品は現在はパブリッシャーが変わっていますが、以前はDevolver Digitalが販売していました。Devolver Digitalに関してはサントラの販売において『Hotline miami』でもタグがバラバラで、音質も一定でなかったり中身が足りてないものを販売したため過去に炎上しています。その際にも「アーティストから提供された物を尊重してそのまま販売しただけ」と釈明し未だに改善されていないことから、本作品に関してもライセンスを把握せずにサントラとしてコレクターズエディションに組み込んだのではないのかという確信に近い疑問を筆者は持っています。この例に限らず、アセット類に関しては、ライセンス違反どころか、以前『ファイナルソード』でも話題になったように、アセットの中に他者の著作物が混ざっていても気づかず販売や配布してしまう可能性すらあるため、サウンドトラック販売の際にも改めて気をつけましょう。値段と中身の格差Steam上のデジタルサントラと実物の仕様差が大きいのは残念ですよね?特に、双方の価格差がない高額商品であれば。続いての例は『大航海時代4 with パワーアップキット HD Version』です。先に言っておきますが、筆者は本シリーズの楽曲、特に菅野よう子氏のアレンジが非常に素晴らしい初代と2のものが大好きです。なにせ、今作についてデジタル版も実物CDが付属する版も両方買うぐらいには。結果としてこの問題に言及することもできます。後に同値段のディスクパッケージを買った上で比較していますが、Steamのデジタル版ではタグ無しのMP3にそれぞれのディスクのジャケットアートが収録されているだけ。特にタグの欠如がデジタル環境での管理には致命的です。ゲーム価格分を差し引いたとしても、1万を超える高額なサントラとなるこの一本。既に入手困難となってしまった旧サントラを事情で手放さざるをえなかった筆者のような人間を含め、内容自体は破格なものではあるのですが……。それだけにデジタル版は残念な仕様でした。じゃあValveはどうなの?実はValveの『HALF-LIFE』や『Portal』といった自社タイトルのサウンドトラックは、ほとんどが無料でダウンロードできます。『Dota2』や『Team Fortress 2』などは一部有料ですが、提供される状態は有料タイトルも無料のサウンドトラックも同じです。Valve自体はサウンドトラックの提供の方法自体はドキュメントで示しているものの、「このような形式や内容での提供が望ましいです」という明確な基準を提示していません。今に至るまでの配布スタイルの混乱は実はここにあるのではないかと筆者は思っています。話を戻して、Valveタイトルのサウンドトラックの仕様については、現在では各タイトルともジャケットアートとMP3(320kbps)、可逆オーディオであるFLAC(何故かFLACにはタグ無し)で提供されており、細かいところに不安があるパブリッシャーはこちらを参考にユーザーへ提供するのが無難でしょう。オススメの管理方法とサントラSteamクライアントでの楽曲再生と管理は正直に言ってオススメできません。Steamクライアントでの再生リストがタイトル毎にしか機能しないことと、リストを確認する際にも数が増えると探しづらいなど、かなり不便な仕様になっています。幸い楽曲はローカルディスクにダウンロード出来るため、筆者は昔から管理自体はfoobar2000(外部サイト)というプログラムを使用しています。カスタマイズが前提なプラグイン方式のため若干玄人向けではありますが、DLNAを使用することで別環境でも再生できるなど高機能で重宝しています(前回のサントラの記事などでも画面写真で映っているのが本プレーヤーです)。<cms-pagelink data-page=”2” data-class=”center”>そんな筆者が本当にオススメするサウンドトラックは!?</cms-pagelink>上記を踏まえて筆者がオススメしたいサウンドトラックカプコンゲームサウンドトラック最初に挙げたカプコンのゲームサントラは高クオリティなのにも関わらず、実はそこまで知られていません。この記事を読んでいる方でも初めて知ったという方もいるのではないでしょうか?ゲーム本体がSteamになくてもサントラ単体の配信ができる現在のSteamのサントラの購入機能を十二分に活かし、『深世海』や『ブレスオブファイア』シリーズなどSteamで販売されていないタイトルも扱っており、正に隠れた名盤だらけ。各社もこの流れに追随してくれればと思っています。ムラサキ / ムラサキ 劍以前の導入記事でも触れましたが、フリ-ゲームにもかかわらず各種デジタル販売が行われるまでは数万を超えるプレミア価格になっていた頒布サントラも有名です。ゲーム性と相まって楽曲のクオリティが非常に高く、全編通してフュージョンが好きなら、迷わず買った方が良いと言ってしまえるサウンドトラックの一つです。続編の『ムラサキ 劍』も前作に劣らず同様にゲーム性と見事に調和した素晴らしい楽曲群のため『ムラサキ』の楽曲に満足したなら確実に刺さることでしょう。Supergiant Games最近では『HADES』の大ヒットで有名になった同社ですが、筆者は『Bastion』のサントラを購入したことがキッカケで『Transistor』以降の作品は予約して購入しています。同社のタイトルはDarren Korb氏という方が専属で携わっているのですが、BastionやPyre、HADESのような民族的なトライバル楽曲だけでなく、Transistorのテーマ曲でもある”We All Become”のような幅広い楽曲スタイルを持っており、全てのタイトルで存在感を示しています。Frontwingアダルトゲームの他、グリザイアシリーズでも知られるFrontwingは、筆者が知る限りSteamで初めてハイレゾオーディオを販売しています。対応環境がなければ再生出来ない他、そこまでの高音質を求めている層は果たしてどれだけいるかは正直わかりません。筆者の環境でも再生はできるのですが、正直に言って通常版のWAVデータとそこまで違いが分からないというのが本音です……。とはいえ、Steamでは同社以外にはほぼ存在しない(他には『バイオハザード7』のサントラにハイレゾ版が同梱されています)ため、ハイレゾに興味がある方は一度試してみるのはいかがでしょうか?Wizardry外伝 戦闘の監獄 & 五つの試練 Audio Collection「もう何回目だよ!」と言う声も聞こえてきそうですが、細かい部分で気が利いているので掲載せざるをえないのです……。その細かい、注目に値する部分はというと、コンポーザータグ。アーティストタグ部分に会社名やボーカルの名前だけが記載されている作品も多い中で、作曲者名をしっかりとタグ付けしているのは好印象です。同様に細かいポイントなのが、ジャケットアートだけではなく、ブックレット部分も実は収録されていること。Steamライブラリにある「追加のアートワークを表示」ボタンを押すとアーティストコメントが参照できます。まだSteamにおいては、ブックレット部分がきちんと収録されたサントラはそう多くはありません。なお、このサントラの原盤は限定販売だったせいか既にプレミア価格で手を出せるレベルの値段ではないため、ゲームサントラマニアという自分の観点からも買うならSteam上のものをオススメします(念のため言っておきますが筆者は本サントラに関してキーの提供などを受けていません)。最後にSteamだけでなく、ゲームサントラはBandcampなどでも購入は可能です。ですが、Steamでの購入はライブラリに残り続けること、更新の際には自動でアルバムの中身も(インストールされていれば)アップデートされることなどのメリットがあります。確かに基準というものがなく、各社バラバラで提供されてしまっているのが現状ですが、Valve自身、過去には同梱していなかった可逆オーディオを採用するなど変わりつつあります。ゲームサントラが好きでゲームとサントラをセットで買い続けている筆者ですが、今後もサントラは買い続けていくことでしょう。なお、サントラまとめは今後も更新を続けますが、私だけでは限界があるので何か考えようとは思います。この提言といえるコラムが、パブリッシャー、ひいては開発者に広がってくれれば幸いです。今後も素晴らしいサントラがでてくれるのを期待しています。
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