……とはいえ、海外では既に発売されている製品なので、もう知っているという人も多いかもしれません。それでも、国内での発売を期待していた人にとっては、まさに待望の製品。7月27日の発売を前に、ひと足先に試聴することができたので、さっそく紹介していきましょう。
AMBEO Soundbarは名前の通りのサウンドバー製品、つまりテレビの下などに設置し、迫力あるサウンドを楽しめる一体型スピーカーです。最近ではステイホーム需要もあり、自宅での視聴体験をアップグレードしたい! という理由から人気を集めているサウンドバーですが、ゼンハイザーといえば上述の通りイヤホンやヘッドホン製品が中心のメーカーなのでスピーカー製品は大変珍しく、そういった意味でも注目を集めています。
そんなAMBEO Soundbar、いわゆる一般的なサウンドバーを想像していたら面食らうこと請け合い。約36万円(実売35万7,000円前後)という他に類を見ない価格から始まり、構成や機能面など、あらゆる面で超ド級のサウンドバーなのです。
まずは外観からチェックしていきましょう。1枚目の写真は、一見すると小さめのモニターの下に置いてある普通のサウンドバー……に見えるかもしれませんが、実はこれ、60V型モニターの下に置かれているもの。AMBEO Soundbarは、横幅約130cm、重さ約18.5kgという規格外のサイズなのです。元々はこのサイズ感が日本の住宅環境に合わないために販売を懸念していたそうですが、数多くの問い合わせが寄せられて導入を決めたのだとか。国内のマニアの熱意も凄い……。
フロントグリルを開けるとスピーカーユニットがズラリ。ウーファー×6、ツイーター×5、フルレンジスピーカー×2で計13台ものスピーカーが搭載されており、こちらもまたサイズ感に違わぬ物凄い構成。これにより、後述する5.1.4ch(5.1ch+天井4ch)ものサラウンド再生を実現しているというわけです。
対応する入力も充実しており、HDMI×3、光デジタル×1、アナログRCA×1を搭載。Bluetoothや無線LAN、Google Chromecast built-in(音声のみ)にも対応しています。特に、HDMI入力が3基も備わっているのはサウンドバーではなかなか珍しく、どちらかというとAVアンプに近い思想が感じられます。サウンドバー自体が大きく場所を取る分、他のAV機器をまとめて接続してしまえるというのは理にかなっており、利便性も高いといえるでしょう。
最大の特徴は、「AMBEO 3Dテクノロジー」によりサウンドバー1本で立体的なサラウンド音声が楽しめるということ。つまり、従来のサラウンド環境のようにスピーカーを何台も用意する必要がなく、気軽に3Dオーディオを楽しめるようになるというわけです。
この3Dテクノロジーを楽しむためには、まずルームキャリブレーションを行う必要があります。付属するマイクを立てて、室内の反響から部屋の形状を測定することで、壁との距離や家具の位置などを自動で認識してくれます。これにより、室内で音を反響させるように再生され、AMBEO Soundbarを設置した部屋に最適化された5.1.4chのリスニング環境を構築してくれるのです!
AMBEO Soundbarの製品概要をつらつらとご紹介しましたが、結局のところ僕が気になるのは「それって本当(マジ)?」ってこと。なんだかんだいっても、さすがにサウンドバー1本でサラウンド体験を実現するのは無理があるのでは……? 結論からいうとそんな浅はかな考えは木っ端微塵に砕かれるのですが、とにかく持ち込んだBlu-rayソフトなどの音を聴かせていただくことに。
まずは『スパイダーマン:ホームカミング』(音声形式:Dolby Atmos)を視聴しました。物語の中盤、フェリー上でスパイダーマンがバルチャーと対峙するシーンでは、縦横無尽に飛び回るスパイダーマンとバルチャーの迫力あるアクションシーンが見事に表現され、思わず声が出るほどの迫力。各所から放たれる銃弾やレーザー、バルチャーが飛び去るシーンでは頭上を通り過ぎていったように感じるなど、きわめて立体的。もはや疑似的という言葉ではくくれず、「あれ、後ろにスピーカー置いてた?」と振り返ってしまうほどでした。
爆発音などの低音も迫力があり、AMBEO Soundbarの背面にはサブウーファーの出力端子が搭載されていますが、まったく必要ないくらいの力強い量感です。一発目からとてつもないパフォーマンスでねじ伏せられてしまいました。すごいよ、AMBEO……。
それならアニメはどうか!? ということで、続いて『天気の子』(音声形式:DTS-HD MasterAudio 5.1ch)を視聴。晴れ女のアルバイトを始めるシーン(『祝祭』)では、雨の日の空気感や、アングルによる雨音の響き方の違いまで明確に描き分けられていて、本当に雨が降る中にいるのでは? と錯覚する完成度。楽曲も広々と響き、作り込まれた立体的なSE(サウンドエフェクト)と違和感なくなじんでいます。
『天気の子』の楽曲はハイレゾ盤などで聴き込んでいたつもりでしたが、こうしてサラウンド環境で改めて聴いてみると、音楽が周りに広がる特有の感覚に「映画館はこんな感じだったな……」と懐かしくなってしまいました。
帆高が空の上に向かうシーン(『グランドエスケープ』)では、雲を抜けるときの雨粒の質感、曲中でコーラスが入り一気に盛り上がるパートなど、音の上下左右がより広く、緻密かつ壮大なスケール感を楽しめます。派手な場面での迫力はもちろんながら、小さなSEの響き方までじっくり聴き込める細やかな描写力は、正面のサウンドバーからのみ音が流れているということを感じさせず……そもそもどこから音が出ているか? ということすら忘れ、音に包まれた空間の中で作品に没頭することができました。
続いて『THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!』(音声形式:DTS-HD MasterAudio 5.1ch)も視聴しました。「5分30秒の衝撃」と謳われたラストのライブシーンは圧巻の一言。開演前の会場内のガヤガヤした感じから生々しく、ライブ会場に足しげく通っていた日々を思い起こさせるリアルさです(こんなところまでリアルなのか、と笑ってしまいました)。
もちろん楽曲が始まってからの臨場感もライブそのもので、舞台音響の立体感や、歓声・手拍子の広がり方も段違い。アリーナの広々とした響きが再現されており、ちょっとしたライブビューイング(コンサートなどを映画館で配信上映すること)と遜色ないと言ってもいいくらいでした。今回は持参しなかったので試せませんでしたが、実際の音楽ライブの映像なども間違いなく楽しめると思います。
なお、AMBEOの3Dサウンドでは音響設定を「ムービー」、「音楽」などのプリセットから選択可能。上記の楽曲が流れるシーンで切り替えながら視聴してみると、「ムービー」だと立体感重視、「音楽」だと一音一音の定位感重視な印象でした。いかにもサラウンド! という臨場感のある再生を楽しみたいなら「ムービー」、楽曲の演奏をじっくりと聴き込みたいなら「音楽」……という使い分けも明確で、さまざまな用途で活用できそうです。
ちなみにAMBEOの3Dサウンド自体オフにすることもできるのですが、オン/オフによる差は凄まじく、オフだと音質こそ良いものの「あ、目の前のサウンドバーから再生してるな」というのが明らかにわかるほど音場感が狭まってしまいます。今回色々と試した限りでは、コンテンツを普通に楽しむ分には常にオンにしておく、ぐらいの考え方で良いと感じました。
これらの設定はスマートフォン用アプリで設定可能で、プリセットの他にもイコライザーの調整やソースの切り替え、コーデックの確認ができるなど、複雑なスピーカー構成でありながら手軽に扱える点も魅力と言えるでしょう。
ここ最近で「3Dオーディオ」といえば、やはり気になるのはソニーの「360 Reality Audio」(サンロクマル・リアリティオーディオ、360RA)。AMBEO SoundbarはChromecast built-inに対応しており、Xperiaなどの対応機種からストリーミングすることでnugs.netやDeezerなどの音楽を再生可能となっています。
こちらもサラウンドによる恩恵は大きく、映画ほどの迫力はないものの、目をつぶればどれぐらいの距離に何の楽器があるかまでわかりそうなほどで、ステレオ再生とは明らかに次元の異なる立体的な音楽体験を楽しめました。360 Reality Audioは一般的なイヤホン・ヘッドホンなどでも体感できますが、やはりせっかくのコンテンツを楽しむのであれば、こうして環境をそろえて聴くのも大きな価値があるのではないでしょうか。
正直、AMBEO Soundbarを体験する前は「まあ、サウンドバーにしては立体的に聴こえる程度だろう」とタカをくくっていましたが、それが大きな間違いだったことをまざまざと思い知らされました。何よりルームキャリブレーションのおかげで、特別に整えた部屋じゃなくても完璧な音響で楽しめるというのが素晴らしいポイントです。今回の視聴は何の変哲もない会議室のようなスペースで行いましたが、それも忘れてしまうほどの仕上がりでした。
サウンドバーとしてはかなり大柄ですが、13台のスピーカーとAVアンプをそろえることを考えれば、むしろコンパクトだともいえるのかもしれません。ゼンハイザーの担当者にそう伝えたら「気のせいです。大きいです」と言われましたが、僕はそう信じています(確固たる思い)。設置できるスペースがある方はぜひ検討してみては。
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