ジメジメとした梅雨時に、カビが生えるのは家の中だけじゃない。耳の中にも生えるのだ!"耳カビ"に詳しい「耳鼻咽喉科いのうえクリニック」の井上泰宏院長(医学博士)に聞いた。
──耳の中にカビが生えるって本当ですか?
井上はい。カビの菌は一年中生息していますが、やはりジメジメした季節は増殖します。その結果、耳カビ(外耳道真菌症/がいじどうしんきんしょう)になる人が多くなります。
──耳カビになると、どうなるんですか?
井上まず、耳がかゆくなり、耳から汁が出てきます。ひどくなると耳の穴がふさがってくるので、詰まった感じがして、音が聞きにくくなる。常に痛(いた)がゆい感じがあります。
──カビが耳の穴をふさいでしまうんですか?
井上そうですね。写真のような感じになります。
奥のほうに黒く見えるのがカビの胞子。耳の穴を完全にふさいでしまっている。耳の中は暗く風通しも悪いのでカビが繁殖しやすいのだ(写真提供/井上泰宏氏)
──うっ......(絶句)。
井上最終的に鼓膜(こまく)に穴を開けてしまうこともあるんです。
──な、なんで耳カビになってしまうんですか?
井上通常、皮膚にカビがついても増えませんよね。
──はい。
井上それは皮膚がバリアの役目をしているからです。でも、耳の穴をほじくったり、耳かきでかいたりして皮膚を傷つけてしまうと、傷ついた皮膚にカビの菌が侵入して増殖してしまうんです。
──ということは、耳の穴をほじくらなければいい?
井上でも、知らない間に耳の穴を触ってしまうことってありますよね。
──そうですね。例えば、イヤホンをしていて、外したときに耳の穴をほじったりすることがよくあります(笑)。
井上イヤホンをしているときは注意が必要です。イヤホンをしていると換気が悪くなるので、耳の中に湿気がたまりやすいんです。特に梅雨時は湿気が多い。
──ちょうど今の時季ですね。
井上耳に湿気がたまればかゆくなりますし、取り外しのときに耳の中をかいて傷つけてしまえば、そこからカビの菌が侵入する可能性があります。
──おおーっ!
井上また、長時間イヤホンをしていると耳の中が荒れて湿疹(しっしん)ができてしまう人もいます。その湿疹にカビの菌がつけば耳カビになります。
──ひぇーっ!
井上また、素材にも注意が必要です。硬いイヤホンを使うと耳の中の皮膚を傷つけることもある。イヤホンを頻繁に使う人は、それだけリスクが高まります。
──じゃあ、どうしたらいいんですか?
井上耳の中に入れないヘッドホンのほうがリスクが低いんです。
──なるほど!でも、もし耳カビになってしまったらどのくらいで治るんですか?
井上カビの種類によって違います。カンジダやインキンタムシ、水虫になる白癬菌(はくせんきん)だったら、カビを取り除いて軟膏(なんこう)を塗れば、1、2週間で治ることが多いです。
しかし、毒性の強いアスペルギルスというカビだったら、1、2ヵ月かかる人もいます。ついたカビとその人の健康状態によって、だいぶ差が出てきますね。
──体調が悪いと長引くんですね。
井上そうです。抵抗力が弱っていると、耳カビだけでなく、鼻カビになる場合もあります。
──は、鼻カビですか!?
井上抵抗力の弱い人がカビの胞子を吸い込むと、鼻の中でカビが増殖します。基本的には片方の鼻の穴が詰まってきて、そのうちに鼻が臭くなり臭い鼻汁が出るようになる。
──臭い鼻汁......ですか。
井上これもカビの種類によりますが、カンジダやアスペルギルスならまだいいのですが、さらに毒性の強いムコールだとかなり危険です。
──かなり危険というと?
井上カビの菌が目の中に入って目が腫(は)れる。場合によっては失明します。さらに、菌が脳の中まで広がるとムコール鼻脳症となり、命を落とす危険性もある。
──マ、マジですかー!?
井上はい。でも、鼻カビは耳カビに比べて発症しにくいので、極端に抵抗力が弱っていなければ、それほど心配することはないと思いますよ。
──これから抵抗力をつける食べ物をたくさん食べます!最後に耳掃除はどうしたらいいんですか?
井上耳の中の皮膚が強い人は耳かきをしても構いませんが、弱い人はお風呂上がりに綿棒などで掃除するのではなく、ドライヤーでヤケドしない程度に乾かすことをオススメします。
耳アカは自浄作用である程度たまったら出てきますし、耳アカがたまったとしても病気ではないので、あまり頻繁に掃除しないほうがいいでしょう。
***
耳の中がかゆくなっても、あまりほじくらないほうがいいようだ。そして、少しでも違和感があったら、耳カビじゃないか病院で診てもらおう。
取材・文/村上隆保
カテゴリー
関連記事
ホット記事