ソニーが完全ワイヤレスヘッドホンの新製品『LinkBuds』(リンクバッズ)を発表しました。特徴はドーナツのように穴の空いたドライバーユニット。
耳栓型イヤホンのように耳をふさぐことなく、周囲の音を自然に聴きながら音楽や音声コンテンツを重ねて楽しむ新しいリスニングスタイルを提案する製品です。
また独自の形状から、ソニーの完全ワイヤレスイヤホンとしては最小・最軽量の片方約4.1gとなっています。
ソニー Link Buds WF-L900 グレー(Amazon) ソニー Link Buds WF-L900 ホワイト(Amazon)
耳を塞がない新しいイヤホン!といえば、同じソニーグループで Xperia Ear Duo も輪のような部分を耳に当てて聴く構造でした。
しかし Xperia Ear Duo が耳の後ろに大きめの本体とドライバを置き、金管楽器のような音導管で耳の穴まで伝える仕組みだったのに対して、LinkBuds は12mm径のドライバ自体が穴あき。一般的なドライバの真ん中に穴があり、振動板もマグネットもドーナツ型をしています。
耳を塞がない・耳の穴に挿さない楽な装着感
穴あきドライバの利点は、なんといっても周囲の音がそのまま自然に聞こえること。
耳栓型のイヤホンでは、周囲の音を聞き取りたいときのための透過モード / 環境音モード / 外音取り込みモードを備えるものがありますが、それらはマイクで拾った音を再生する仕組みなので、製品により大きく変わるものの、どうしても聞こえ方は裸耳(?)とは変わってきます。
一方 LinkBuds は本当に開放されているうえに耳の穴を塞がないため、自然に聴こえる……というより自然そのもの、そのままな聞こえ方です。
耳を塞がないことのメリットは、物音や話しかけられたときに気づけるほか、自分の声がそのまま聞こえるため通話時や音楽を聴きながらの会話で不必要に大声にならない、ものを食べながら使っても咀嚼音が耳に響いて気になることがない、耳が蒸れない、長時間の装着で耳の穴に負担がかからないなど。
外見が不思議なのでどう装着するか微妙に謎ですが、分かりやすい図はこちら。カナル型のように耳の穴まで差し込むことなく、リングを耳の穴のうえに乗せるような感覚です。
ドライバと反対側には柔らかな羽部分(フィッティングサポーター)があり、こちらが耳のくぼみにはまることで固定します。
耳の穴にがっつり挿さないことで落ちやすそうにも思えますが、実際にはこのフィッティングサポーターのサイズさえ合うものに交換すれば、柔らかく弾力あるサポーターが上からもつっぱる形になるため、むしろ一度装着すると指でもすぐに取れず戸惑うほどしっかりフィットします。
サイズが小さく、高さや突き出した部分が少ないため、引っかかって落ちにくいのも常時装着には大事な点です。
フィッティングサポーターは5サイズが最初から付属し、かんたんに付け替えられるようになっています。
不快感がない「ワイドエリアタップ」
穴開きドライバとならんで面白いのは、本体だけでなく周囲の顔をタップしても振動を拾って操作できる「ワイドエリアタップ」機能。
従来の完全ワイヤレスイヤホンでは、振動センサを使い本体をタップして操作するものがよくありますが、耳の穴に挿さったものを叩かせるため音が響き不快になる構造的な問題がありました。タチの悪い製品では自然にタップしてダイレクトヒットする位置にノイズキャンセルや外音取り込みのマイクがあり凄まじい音を聞かされる、どういう判断で販売されたのか分からないようなものも。
LinkBuds は構造的に耳の穴に挿さないため本体をタップしても響かないうえに、耳の近くの顔を触るだけで操作できるため快適な使い心地です。
(なお、判定はダブルタップまたはトリプルタップのみ。誤検出を押さえるためか、シングルタップは拾いません。)
完全ワイヤレスイヤホンとしての基本性能としては、連続再生時間がイヤホン単体で5.5時間、充電ケース併用で12時間。
「聴きたいとき、外音をシャットアウトしたいときに着ける耳栓」ではなく、常時つけっぱなしでさまざまなコンテンツやコミュニケーションに使う「ながら聴き」イヤホンというコンセプトにしては、5.5時間しか聴けないの?となりますが、これは再生をし続けた場合の数字。Bluetooth 接続のままの待受時間は約11時間と長くなっています。(ただし連続通話は最大2.5時間。たまにはケースで充電が必要になりそうです)。
そのほか、左右同時伝送方式による安定した接続、IPX4の防滴構造、圧縮音源の高音域を補完するDSEE、 周囲の音に応じて音量を自動調整するアダプティブボリュームコントロール、着用者が話し始めると自動で再生中の音をミュートするスピークトゥチャットも備えます。
Bluetooth のコーデックは基本のSBCに加えて、アップル製デバイスなど多くの製品で使われるAACにも対応。ソニー製品ですが、ハイレゾで音に集中するコンセプトではないためか LDAC には非対応です。
GoogleアシスタントやAmazon Alexaといった音声アシスタントにも対応。iOSでも、「音声アシスタント起動」をタップ操作に割り振れば Siri を呼び出せます。
一点残念なのは、AirPods Pro のようなウェイクワードを使ったハンズフリー操作 (Hey Siri や OK Google)に対応しないこと。常時装着するコンセプトであれば、誰かにメッセージを送ったり、時間や曜日や予定を訊く、楽曲を指定して再生といった操作がハンズフリーでできればさらに便利に使えそうです。
360 Reality Audio や「音のAR」対応
さらに内蔵のジャイロセンサによるヘッドトラッキングで、音の聞こえてくる方向も再現する Sound AR にも対応します。
たとえば位置情報によりさまざまなオーディオコンテンツが楽しめる Locatone アプリでは、「この地点まで歩くと聴こえる」だけでなく、「この方向から実在感をもって聴こえる」へ。マイクロソフトの3Dオーディオマップアプリ Microsoft Soundscape にも対応します。
LinkBuds の発売日は2月25日、市場想定価格は2万3000円。本体カラーはホワイトとグレーを用意します。
短時間ながら試用してみた印象。個人的に多数のアクティブノイズキャンセリング対応ワイヤレスイヤホンを試すなかで、外音取り込みの自然さにおいては AirPods Pro がいまだに抜きん出たものがありつつ、他社も急激に追いつつある状況と感じていましたが、こと「自然さ」については勝負にならないレベルで LinkBuds が上。本当に穴が空いているため、「かのように聴こえる」ではなくただ聞こえている音そのものです。
耳栓型のイヤホンを忌避する理由として「周囲の音が聞こえないと不安」「装着時に耳が痛くなる」は双璧と思いますが、LinkBuds は耳栓としての使い方を捨てる一方、この二つにはほぼ完璧に応えます。
穴あき開放型として気になる音漏れについては、周辺環境や再生するコンテンツ、音量、不快感を与えるかもしれない相手の距離といった要素が複雑に影響するため、「音漏れする・しない」とは書きづらいところですが、ドライバが耳の上に密着するためか意外に漏れない印象。
原理的には穴から音が漏れますが、一般的なオフィス程度の環境と距離感で、大音量にしなければ、おそらく気づかれて怒られる可能性は低そうです。なにより、知らないうちに音漏れして相手に舌打ちでもされたらすぐ気づけます。
周囲の音を聴きたい、着けっぱなしで過ごしたいという「ながら聴き」需要に応えるコンセプトですが、ノイズキャンセリングが必須で耳栓型を愛用しているユーザーにも意義がある製品です。
特に外音取り込み機能は微妙に聞きづらくて不便と感じたり、話しかけられたときやレジ前で慌てて外している場合は、LinkBuds を「耳の機能拡張」として常時着用しつつ、耳栓型は特に周囲が騒がしいときや集中して聴きたいときに使う併用が便利そうです。
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