――今回ゲーム内のたくさんの場所が映画の中に登場していますね。現役のプレーヤーから見ても、こんな場所があったんだと驚くような斬新な構図で撮影されていたりもしましたが、ゲーム内でのロケハンはどんな形で行なわれたんですか?
山本氏: 「今日ロケハンするぞ」という感じではなくて、シャキ待ち(編集部注:コンテンツファインダーのマッチング待ちのこと)の間だったり、今日は特にやることがない日ってあるじゃないですか。月曜のにトークン集め終わっちゃったなあという時なんかに、「じゃあ、ロケハンでもするか」と(笑)。本当に暇つぶしの感覚であちこち行って、こんな所があったんだとその都度アップデートしていました。
――その時にも撮影はされていたんですか?
山本氏: テスト撮影的な雰囲気で撮ってみたり、資料用にスクリーンショットを残しておくという感じでした。
――意外な場所が多いですよね。例えば、マイディーさんが「よしだあああ」と叫ぶブロンズレイクの屋根の上とか。
山本氏: あそこは単純に好きなんです。ちょっと人が行きづらい場所じゃないですか。登り方を知らないと来られない場所なので、わりとマイディーさんも好きな場所なんです。簡易的な宿屋みたいな感じで。人が来づらい場所、なおかつ登らないと行けないという場所なので。わりと僕らは好きな場所で、今回はあそこを使おうということになったんですよね。あれは、ロケハンというかずっと前から我々はよく使っている場所です。
ブロンズレイク。遠くにワンダラーパレスが見える――よく行かれるんですか? あそこを使ったのはマイディーさんの提案だったんですか?
山本氏: 「今回のよしだーはどこでやりましょうか?」と言われて、結構話をしたんですが、あそこはどうですか?と提案すると、ああ、そうしましょうとなりました。
――ワンダラーズパレスが見えるところの風景は、他にも何度も出てきましたが、あの風景がお気に入りなんですか?
山本氏: 新生エリアでいうと、あそこが圧倒的に完成度が高いと思うんです。建物の形であったり、日の落ち方や空気感。あそこは湖なので、水の反射や揺らぎであったりだとか。温泉もあるので街には湯気が出ていて、撮影環境としていろいろなシチュエーションが撮れるということもありますし、景色として秀逸だと思います。それに人もあまり来ないので(笑)。
――色々と撮りやすいわけですね。ほかにも蒼天エリアでいうと、ハルドラス像の上なんかも使われていましたが。
山本氏: 今回の映画ではエオルゼアパートの方に壮大なイメージというか広い絵が求められていたので、それなら空撮かなと思うわけです。空撮をする場所としては、ドーンと抜けていてかつ対象物としてはっきりしているものがないと壮大感がでないので、あの像いいよねという話になりました。下の方でNPCが作業をしていますが、あのNPCが何をしているのかはヒカセンでなければ分からないですよね、ずっと復興しているんだなと。そういうシチュエーションが結構良くて、ぐるっと回って撮ってみたら壮大な感じになったので、これはいいなと。
クルザス西部高地にあるハルドラス像――まず撮りたい絵があって、それに合わせて風景をチョイスするわけですか?
山本氏: そうですね。クルザス西部高地の辺りはドラマ版でも番外編でも使っていますが、高さの表現が計算されているので、景色のヌケ感とか高さとかが秀逸なんですよ。飛びたくなるエリアと言うか、あそこって、最初に風脈を開ける場所じゃないですか。飛んで楽しいエリアになっているから、非常に壮大感があります。「紅蓮」のエリアではもう飛ぶのが当たり前になっているので、壮大なイメージというよりは、飛んで探すという感じが多いですけれども、西部高地はかなり立体的なんですよね。そこが良いなと思っています。
――ああいうゲームの地形は基本的に意図を考えて作られているわけですが、リアルな撮影のロケハンとの違いはありますか?
山本氏: リアルなロケハンとの一番の違いは、僕が空を飛べることかな。上から見たらこうなるんだと。実写のロケハンでは、誰の許可もなくちょっとここ空から見てもいいですかとは言えないですから(笑)。
――レンズフレアも印象的に使われていましたね。光がかなり効果的に使われていたように感じました。
山本氏: 実写の場合は逆光だと、シャドウ部分が暗くなるんです。でもエオルゼアの場合は自動的に補完されて、照り返しが入り、顔が全く見えないということにはならないんです。撮影の安田さんと、そこがちょっと面白いよねという話になって、逆光の表現を敢えて狙っています。逆光でポートレートを取る時には、前の方からも押さえで光を入れるといい感じになるんですが、エオルゼアではそれがやりやすいという発見があって。ブロンズレイクあたりだと晴れの時には、下からの照り返しもあって微妙に照明の表現が良くなるんですよね。そこが、僕らの狙いというか、あえてやっています。
――そういうことまで考えられているから、あの絵作りができたわけですね。
山本氏: 実写の知識を使って撮影しているというか、「あ、これができるんだ」という発見があります。
――ゲーム内で動画を作っている方の「なかなか、ああはいかないな」と言うコメントも見かけました。
山本氏: いや、そんなことはないと思います。照明などは確かに知識が必要だと思いますが、ライブサーバーで撮影されている方たちは限られた天候の中でやらざるを得ないということもあると思いますので。そういえば、エオルゼアでは快晴の時光が強くて、顔が白飛びしてしまうんです。吉田さんに、この照明の光を抑える機能を付けて欲しいと言ってるんです(笑)。
ベスパーベイのロロリト像――太陽光がまぶしすぎるということですか?
山本氏: そうです。または光を遮るなにかを置ける機能が欲しいと。僕らの世界ではフラッグという光をさえぎるための板があるんですが、それを使うと、例えば木漏れ日が顔にかかると絵としてはよくないですが、フラッグを使えばいい感じになるので。でも用途が限られ過ぎているので実装は難しいと(笑)。
――確かにあればSSを楽しんでいる人たちが喜びそうですね。
山本氏: 絶対に喜びますよ。
――今回TVドラマ編と比べてグループポーズもかなり進化していると思いますが、それで始めて可能になった絵作りなどはありますか?
山本氏: 非常に有効だったのはレンズですね。広角の場合はちゃんと魚眼ぽくなるし、望遠にしていくとちゃんと背景の遠近感もなくなるよう計算してレンズが作られているので。これは普通のゲームにはあまりない機能だと思います。我々監督サイドからすると、非常に嬉しい機能です。ひとつ難点があるとすれば、本物のレンズは望遠になればなるほど背景がぼけるものなんですが、「FFXIV」の場合はパンフォーカス(画面全体にピントが合うこと)がかかりまくっているので面白い絵になりますし、使いづらいときもあります。でもそこはゲームならではなので、使い方かなと思っています。 後は、グループポーズではエモートをオン、オフできるのは大きいですね。他人のエモートも操作できると一番いいんですが(笑)。ただ今回は印象的なシーン以外ではグループポーズはなるべく使わずに、主観で撮るようにしています。
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