ここ数週間アップルが自動運転EV(通称アップルカー)の生産契約を韓国ヒュンダイと締結間近との噂が活発化していましたが、ヒュンダイ社内で幹部らがアップルとの提携を巡って「分裂」しているとの観測が伝えられています。
そもそもの始まりは、今月初めにヒュンダイがアップルと自動運転車の開発に関する協議をしていると報じられたこと。しかし数時間後にヒュンダイはアップルへの言及を削って「自動運転EV開発のための潜在的パートーナーから連絡を受けている」とトーンダウンさせた声明を発表しています。
さらに「3月までにアップルとヒュンダイが生産契約を締結」と噂されたのち、ヒュンダイ傘下の起亜自動車が製造予定との報道があり。それと合わせて「アップルカーの生産拠点は起亜の米ジョージ工場になる」との具体的な見通しも伝えられていました。
しかし新たなReuters報道によると、ヒュンダイ幹部らは「それ(アップルとの提携)を行うべきかどうか、どうやって行うかについて悶々としている」とのことです。「我々は他社のために車を製造する会社ではない。アップルと組めば必ずしもいい成果が出るとは限らない」として、アップルの下請け扱いされる懸念を抱いている模様です。
ヒュンダイは垂直統合サプライチェーンのもと、エンジンやトランスミッション、鉄鋼までも社内で生産しており、部外者との協力に消極的なことで知られている企業です。上記の報道により起亜とヒュンダイの株式は急騰したものの、アップルの契約メーカーになることには反対が根強く、パートナーシップを保留する可能性があると伝えられています。
アップルとヒュンダイが提携の協議を開始したのは、現在はフォルクスワーゲンに所属するアレクサンダー・ヒッツィンガー氏(2019年に引き抜き)がアップルの自動運転プロジェクトを率いていた2018年まで遡るとのこと。つまり足かけ2年協議しながらも、ヒュンダイが他社と協力することに消極的なために進展していないと解釈できそうです。
そして事情に詳しい人物いわく、ヒュンダイがアップルとのパートナーシップのもとで社内文化の衝突を避けるには「一部の幹部を置き換えなければならない可能性が高い」とのこと。「アップルはボスです。彼らはマーケティングを行い、製品を作り、ブランドを作る。ヒュンダイもボスです。これでは仕事になりません」と述べられています。
他の事情通によると、アップルはフレームやボディ、ドライブトレインなど独自設計の主要部品を様々な場所から調達し、最終的な組み立てにヒュンダイや起亜の力を頼ろうとしているとのことです。
これは別の匿名ヒュンダイ幹部のいう「Googleやアップルのようなハイテク企業は、我々が(iPhoneを組み立てる)Foxconnのような存在になることを望んでいる」言葉を通じて理解しやすいでしょう。すなわち提携の当初こそヒュンダイや起亜のブランドイメージを高めるかもしれないが、中長期的にはアップルが頭脳であり、ヒュンダイは組み立てサプライヤーの立場に置かれることが危惧されているわけです。
昨年(2020年)末にReutersはアップルカーが「早ければ2024年に生産開始」と報じた一方で、Bloombergは「生産段階に近いところにはない」との観測を述べていました。こうして情報源ごとに予測に開きがあるのは、技術の問題よりも交渉相手の自動車メーカーにアップルの下請けにされることへの警戒心があり、未知数の要素が多いためかもしれません。
Source:Reuters
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