アップルが第3世代「iPhone SE」を3月18日に発売する。iPhone 13シリーズと同じ最新のA15 Bionicチップを搭載する、5G対応iPhoneのエントリーモデルの実力を先行レポートで紹介する。【画像】新iPhone SEは5G高速接続に対応している■デザイン/サイズ/ホームボタンを継承2年ぶりのモデルチェンジを迎える新しい第3世代のiPhone SEは、Apple Storeのほか各通信キャリアが予約注文受付を開始した。Apple Storeでは64GBのモデルが57,800円(税込)で販売される。最安値のモデルで見ると、第2世代のiPhone SEから8,000円値上がりした格好だ。5G対応のほかにカメラの進化、本体ガラス素材の強化によるタフネス性能の向上、そしてバッテリーの持ちが良くなることなど、主立った進化の内容には8,000円分以上の価値があると思う。第3世代のiPhone SEも、4.7インチのRetina HDディスプレイを引き継いだ。5G対応に伴って必要になる放熱処理設計も加えているのだろうが、第2世代機と同じ、ハンドリングの良いサイズ感をキープした。質量は第3世代機の方が4g軽くなっていて、その差はわずかながらも、「iPhone SEは軽い」という手応えを改めて感じさせる。今回、本体色はミッドナイト、内蔵ストレージは256GBのモデルを入手した。ミッドナイトの魅力は、光が当たるとわずかに青みがかる繊細な色合いにある。サイドフレームには航空グレードの7000系アルミニウム合金を採用。トップと背面のガラスは、iPhone 13シリーズの背面にも採用するタフな強化ガラスとした。慣れたスマホを長く使い倒すことを好むiPhone SEユーザーの期待に応えて、新世代機では性能もさることながら「頑丈さ」を高めた。Touch IDによる指紋認証センサーを内蔵するホームボタンが、第3世代のiPhone SEにも受け継がれている。iOS 15.4から、顔認証システムFace IDを搭載するiPhoneもマスクを着けたまま画面のロック解除等ができるようになることから、筆者はアップルがこのタイミングでiPhone SEのデザインを一新し、本体フロントのホームボタンに引導を渡すのではないかと予想した。しかし、やはり日本だけでなく、世界にはまだ、ホームボタン搭載iPhoneを求めるユーザーの声が強くあるようだ。■いま最新のA15 Bionicチップを搭載するメリット新しいiPhone SEにA15 Bionicチップが搭載されたメリットをひも解こう。チップの処理性能を、2017年に発売されたA11 Bionicチップを搭載するiPhone 8と比較すると、iPhone SEはCPUが約1.8倍、GPUは約2.2倍の高速化を果たした。特にiPhone 8より前のiPhoneを使っている方は、この機会に新しいiPhone SEに買い換えると、動作の快適さが存分に実感できるだろう。筆者も実機に触れてみて、アプリの起動からコンテンツの再生までレスポンスが向上している手応えを得た。強化されたバッテリー性能を検証!A15 Bionicチップには、主にAI処理を行う16コアのNeural Engineが搭載されている。その処理性能はA11 Bionicを搭載するiPhone 8より約26倍も高速化した。その真価は高橋敦氏の連載 “iPhone TIPS” で紹介している「iOS 15の翻訳機能」にもよく表れる。翻訳機能を使うには、iOSの設定から、一般>言語と地域>テキスト認識表示を「オン」にしておこう。iPhoneのカメラを起動して、文字の被写体にレンズを向けるとフレームの端にアイコンが表示され、アイコンをタップすると文字を認識してデジタルテキストに自動変換する「ライブテキスト」が使える。本機能は残念ながらまだ日本語テキストの自動認識には対応しないが、英語のドキュメントをiPhoneのカメラでスキャンして、素速く翻訳やウェブ検索ができるので、現時点でも便利に使える。日本語も単語単位で文字を認識して英語などに翻訳できる場合もある。これらのAI処理を伴うiOS 15の新機能が、新しいiPhone SEではサクサク動いた。■5G対応はやはり心地よかった5Gは日本国内でも接続エリアが徐々に広がり、高速・大容量通信のメリットが実感できる場面が増えた。第3世代のiPhone SEが対応する5G通信はSub6周波数帯に限られ、なおかつ理論値の通信スループットはiPhone 13シリーズの4×4 MIMOよりもやや劣る2×2 MIMO対応だが、それでも4G LTEを超える通信の速度や安定感のメリットは十分にありそうだ。筆者が5Gのエリア化が完了している近所で測定したところ、下り側は100-120Mbps平均の通信スピードが安定して出せていた。iPhone SEにはiPhone 13シリーズと同様に、5G接続時に際立った速度が得られない際、自動的に4G LTE接続に切り換えてバッテリーを節約するスマートデータモードがある。iOSの設定からモバイル通信に入り、主回線のモバイル通信プランを選択。「音声通話とデータ」から「5Gオート」を選ぶ。おそらくデフォルトが5Gオートになっているはずだが、もし「5Gオン」や「LTE」が選ばれていると、バッテリーの減りが速くなったり、あるいは5G契約をしているのにスピードが思うように出ない場合がある。設定を確認しておこう。■さらに長持ちするバッテリー第3世代のiPhone SEは電力効率の良いA15 Bionicチップを搭載し、5G通信などその他のタスク処理に最適化を図った。そのため内蔵バッテリーによる連続駆動時間が先代モデルから改善されている。新しいiPhone SEもQi互換のワイヤレス充電に対応するが、アップル独自のMagSafeはサポートしていない。ただ、純正のMagSafe充電器によるワイヤレス充電はできた。当然だが、マグネットはゆるっとして固定されず、iPhone 13シリーズのような使い勝手にはならないので注意したい。iPhone SEにSIMカードを装着して、1日のバッテリー持ちをチェックしてみよう。なおスペック上では第3世代のiPhone SEは、第2世代機に比べてビデオ再生で約2時間、オーディオ再生で約10時間より長く連続使用が期待できるとされている。就寝前に100%の充電を完了。起床後は95%の残量から、その日はレビューの検証も兼ねてカメラによる写真・動画の撮影や、音楽・動画コンテンツの再生、ゲームなど平時よりもヘビーめにiPhoneを使い倒してみた。残量は夕方18時頃には40%、夜の22時頃には20%ほどになっていた。筆者が普段使っているiPhone 13 Proの方が長持ちはするものの、iPhone SEでもバッテリーの減りにさほどストレスを感じないスマホライフが楽しめそうだ。気になるカメラ性能は?■カメラの使い勝手も底上げされているiPhone SEのカメラは、恐らく新旧モデルで光学系は変わっていないが、A15 Bionicチップの最新ISPを活かしたコンピュテーショナルフォトグラフィー関連機能が追加された。ディテールの情報を引き出すDeep Fusion、色彩やコントラストの向上、バックグラウンドノイズの低減に貢献するスマートHDR 4により、安定した写真撮影が楽しめる。昼間の屋外で撮影した写真は、iPhone 13 Proシリーズと出来映えにさほど遜色ない。動画撮影も光学式手ぶれ補正の安定化を図り、30fps撮影時のダイナミックレンジを拡張している。一方でドルビービジョン対応のHDRビデオ撮影やシネマティックモードは、上位iPhone 13シリーズならではの機能として差別化を図った。さらに残念だったのは、暗い場所でも明るく色鮮やかな写真が撮れるナイトモードがiPhone SEにないことだ。エントリークラスのiPhoneだからこそ、暗い場所でもきれいな写真が撮れることを頼もしく感じるユーザーは多くいるはずだからだ。ただ、実際に試し撮りをしてみると、新しいiPhone SEはA15 Bionicチップの高性能なISPの恩恵により、暗い場所でも安定した写真撮影が楽しめた。被写体となる人物の肌は自然な色合いに保ったまま、トーンや温かみを調整した写真が撮れる「フォトグラフスタイル」機能が第3世代のiPhone SEにも搭載された。メイン側だけでなくフロントカメラでも使えるので、セルフポートレート撮影に活かしたい。料理を美味しそうに撮りたい時にも重宝する。◇iPhone SEはジャケットやパンツのポケットにもジャストフィットするサイズで、片手持ちによる操作感も優れているスマートフォンだ。筆者自身はこの頃、iPhoneでゲームや電子書籍もよく楽しむので、6インチ台の大きな画面が欠かせない。だが、しばらくiPhone SEを持ちながら過ごしていると、やはりこの大きさも心地よく思えてくる。最新のA15 Bionicチップを搭載したiPhone SEは、これからしばらくの間はiOSのアップデートにより追加される機能やサービスが快適に使えるはずだ。Apple Storeの販売価格はiPhone 13 miniやiPhone 12 miniよりも格段にお手頃なので、はじめての5G対応iPhoneとしてもおすすめしやすいと思う。
山本敦
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