イオンで使える決済のトータルアプリ「iAEON」
iAEONアプリはiOS版とAndroid版を用意。機能はほぼ同じですが、現時点ではWAONがAndroid向けのみ提供なので、iOS版iAEONアプリにはWAONの機能がありません。2021年内にはiOS向けにもWAONの提供が始まる計画なので、近々統合されると思われます。
最初にiAEONアプリを起動すると、まずはアカウントとしてiAEON IDを作成。既存のイオンスクエアのようなアカウントではなく、新規の作成です。アカウント登録には携帯電話(スマホ)の電話番号が必要となり、SMS認証が行われます。指定した電話番号(通常は自分のスマホ)に届くSMSには6ケタ番号が書いてあるので、それをiAEONアプリに入力するとパスワードの登録画面になります。
ここで非常に困るのが、パスワード入力欄にテキストのペーストができないという点。パスワード管理アプリによる自動入力もできないようになっており、パスワードを自力で入力しなければなりません。一般的にパスワードは使う文字数が多いほど安全性が高まりますが、通常は覚えられないため、iOSやAndroidにはOS標準でパスワードの作成・保存・入力機能が備わっています。
ちなみに私はOS標準機能ではなくパスワード管理アプリで管理しています。OS標準機能とどちらを使うにしろ、複雑なパスワードも自動で作ってくれますし、どんな複雑なパスワードでも保存してくれます。サービスごとにパスワードの使い分けもできて安全性が高まります。パスワードの基本である「文字数を多くする」「使い回しをしない」という観点からすると、パスワード管理アプリやOS標準機能を使えないようにしているiAEONには改善を求めたいところです。
なお、Googleの日本語入力である「Gboard」にはクリップボード機能があり、コピーしたテキストを保管できます。iAEONアプリのパスワード入力画面でGboardを表示するとクリップボードが使えるので、どうにか複雑なパスワードのコピー&ペーストが可能でした。
そんな問題はありますが、アカウントを作成するとiAEONアプリにログインできて、続いてクレジットカードなどの登録画面になります(スキップも可能)。
クレジットカードはイオンのマークが付いたカード限定、いわゆるイオンカードです。イオン銀行のデビットカードも含まれます。一般的なクレジットカードが登録できないのは残念ですが、WAONでも同様ですし、iAEONアプリは基本的にイオンでの利用を前提としているので囲い込みということでしょう。イオンカードを登録すれば、後述するAEON Payも使えるようになるため、ぜひ登録したいところです。
これまでイオンのサービスでイオンカードやWAONカードをひも付けて登録していた場合、イオンカードをiAEONアプリに登録した時点で、ひも付いたWAONカードも同時に登録されて、すでに貯まっていたWAON POINTの情報が読み込まれます。ただし、ときめきポイントはWAON POINTに移行するためか、iAEONアプリでは確認できないようです。別途使い切るか、10月25日以降は1ポイント単位でWAON POINTに移行できるので、移行すればiAEONアプリで管理できるようになるはず。
イオンカードに加えて、WAON POINTカード、WAONの登録も可能。WAON POINTは物理カードの番号を入力すればOKです。WAONはAndroidスマホのおサイフケータイにモバイルWAONを登録していれば、モバイルWAONのパスワードを使ってiAEONアプリに登録できます。物理カードのWAONでは、カード番号などを登録して設定します。
決済には4ケタのパスコードが必要になるため、登録時にはパスコード設定画面になります。スマートフォンの生体認証も利用できるので、設定しておくといいでしょう。以上でiAEONアプリの基本的な利用設定は完了です。
なお、iAEONアプリの標準設定は「1アカウント1端末」となっており、ログイン中は別のスマホからはアクセスできません。iAEONアプリのセキュリティ設定で「他端末からのログインを許可する」をオンにすると、別のスマホからもログインできるようになります。ただしその場合、iAEONアプリにログインしていたスマホでは自動的にログオフとなり、AEON PayやWAON POINTの登録がリセットされるようです。
結果、別のスマホでiAEONアプリにログインしても、改めてイオンカードやWAON POINTの登録をしなければならないため、一定のセキュリティは担保されていると感じました。iAEON IDとイオンスクエアIDも分離しているので、イオンスクエアIDさえ漏えいしなければ、もしiAEONアプリに不正ログインされても被害を最小限に抑える工夫がなされています。
設定が終わってiAEONアプリを起動すると、上部にWAON POINT、AEON Pay、モバイルWAONのアイコンが並び、その下にイオンの各種サービスへの導線が用意されています。画面下にはマイページやキャンペーン、店舗検索に加えて「会員コード」アイコンがあります。これは画面上部のWAON POINTアイコンと同じで、WAON POINTを貯めるためのバーコードを表示できます。
ポイントはコード決済サービスのAEON Payです。AEON Payアイコンをタップしてパスコード(生体認証)を通すと二次元コードが表示され、店頭での支払いに利用できます。基本的にはCPM方式で、店舗側のコードリーダーでスマートフォンの画面を読み取って支払うタイプです。
iAEONアプリでAEON Payを利用できるのは、イオンカードを登録している人のみ。このAEON Payにはチャージ機能がなく、(事前に貯めた残高から支払いをするのではなく)即時クレジットカードで支払うというものです。イオン銀行デビットカードを登録しているなら、コード決済で即座に口座から引き落とされます。
どちらかというと、クレジットカードやデビットカードをリーダーに差し込んだりタッチしたりする代わりにコードを見せる――という支払い方のバリエーションが増えた形です。カードを財布から取り出さなくても、スマホの画面を見せればイオンカードで支払える点がメリットでしょう。また、1つのiAEONアプリでWAON POINTカードの読み取りやクレジットカード支払い、モバイルWAONへのチャージができるため、複数のアプリを使い分けずに済むのも大きなメリットです。
実際にイオンモールで試したところ、サービス開始後2日目にもかかわらず、従業員の認知度は高い様子。あまりレジ打ちで迷うケースはありませんでした(詳しい店員に聞きに行くことはありましたが)。
AEON Payが使える店舗には、レジ周りにアクセプタンスマーク的にAEON Payのロゴが掲示されていました。一部、掲示していなくても使える店舗もあり、これはそのうち掲示されると思われます。掲示もなく、利用もできない店舗は順次対応するのか、今後も非対応なのかは、その店舗しだいでしょう。
いくつかのテナントで決済したところ、POSレジのハンディバーコードリーダーを使って読み取る場合と、レジ横にある据え置き型バーコードリーダーにスマホ画面(iAEONアプリ)をかざして読み取る場合の2種類がありました。食品売り場のセルフレジは支払いでコード決済を選んでバーコードを読み取る形になっており、おそらくイオン直営店はハンディリーダー、テナントショップは据え置き型なのでしょう。
正直なところ、iAEONアプリを使えばスマホだけで決済できるとはいえ、イオンカードをApple PayやiDに登録したり、おサイフケータイのWAONで支払っても済む話ではあります。イオンカードやWAONカードのタッチでの決済でもいいでしょう。
今後はWAONのApple Pay対応もありますし、イオンカードをGoogle Payに対応させる施策も進めて欲しいところ。ただ、すでにイオンカードやWAONを駆使している人にとって、iAEONアプリは極端に大きなメリットはないように思えます。
iAEONアプリは、イオングループの複数の決済サービスを1つまとめる統合アプリですが、鍵となるのはクーポンかもしれません。どの決済手段で購入する場合も、クーポンを掲示する作業は必要です。クーポンをiAEONアプリの「Myクーポン」に登録しておき、レジで「会員コード」を読み込ませれば、続いて行う決済時にクーポンが自動適用されるようです。
iAEONアプリは、会員コードの表示からAEON Payへの支払いまでシームレスに行えるので、AEON Payのメリットが生きます。「取りあえずイオンで買い物するならiAEONアプリを起動する」という使い方を浸透させるには、いかにクーポンで誘導できるかが重要でしょう。
この記事を書いている時点では、iAEONアプリではまだクーポンは配信されていないようです。iAEONアプリの利用促進にもつながるため、一定の効果的なクーポン配信が期待されます。
もう一つの方向性としては、iAEONアプリのスーパーアプリ化です。リリース時点のiAEONアプリ上には、関連サービスとしてイオンネットスーパー、イオンモールアプリ、AEON WALLET、イオン銀行通帳アプリなどのリンクが用意されています。別アプリを起動したりサイトに遷移するリンクとしてしか働いていませんが、アプリ間の統合やアプリ間の連携をシームレスにすれば、イオングループのアプリやサービスを集約して使いやすくなるはずです。
イオンがこの先、iAEONアプリでどのような戦略を描いているかは未知数ですが、今後はいかに使いやすさとお得感を演出できるかが鍵になるでしょう。
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