アイロボットジャパンは2月10日からロボット掃除機の新製品「ルンバ j7+」「ルンバ j7」を発売しました。実売価格は、自動ゴミ収集機のクリーンベースが付属する「ルンバ j7+」が12万9800円(税込)、クリーンベースが付属しない「ルンバ j7」が9万9800円(同)。新製品の概要は以前の記事でも既に取り上げていますが、今回は、都内で開催されたメディア向けデモンストレーションの様子をレポートします。
ルンバ j7シリーズの最大の特徴は、なんといってもルンバ初の障害物回避機能。初期段階では電源コードやイヤホン、スマホの充電コードといったケーブル類、スリッパ、靴下、靴、ルンバの充電ステーション、そしてペットの排泄物(固形・以下フンと表記)を前面のカメラが認識し、ぶつかる前に回避します。
これまでのルンバは、あえて「当たる」方式を採用してきました。壁やテーブルの脚まわりなど、ルンバが当たることで障害物の際(きわ)のゴミまでもかき出して吸い取るという考え方だったからです。障害物を避ける方式だと、壁際や家具の脚元などにゴミが残ってしまったり、カバーのかかったソファの場合はカバーを障害物と判断して「回れ右」してしまったりすることも。しかし、いままでのルンバの場合は、ソファのカバーも押し上げてそのままソファの下まで潜り込んで掃除できるわけです。
しかし、いままでの「当たる」方式だと、床に落ちたイヤホンのコードやスマホの充電コードなどを回転ブラシが巻き込んでルンバが動けなくなったり、床に粗相したペットのフンにルンバが乗り上げて目も当てられない大惨事になったりと、多くの不便が発生していました。そんな課題を解消すべく、今回初めて障害物回避機能を搭載することとなったのです。
ルンバ j7は電源コードやペットのフンなどのデータをあらかじめ備えており、掃除中にそれら障害物を見つけた場合は回避するようにプログラムされています。ペットのフンといっても千差万別。犬と猫では大きさも形も色も違う。大型犬と小型犬でもかなり異なるし、同じ犬でもその日の体調によって違ってきます。
そのため、アイロボットでは大きさ・色・形さまざまなフンの3Dデータを収集し、膨大なシミュレーションを実施しました。これにより、犬と猫に関しては大小様々なフンを見分け、回避することに成功。もし清掃中にペットのフンが付着してしまった場合、メーカー保証期間内1回に限り、無償でルンバ本体の修理・交換してくれるとのことで、回避プログラムに自信を持っていることがうかがえますね。
ちなみに、ペットのフンを含め、ルンバ j7が掃除中に見つけ、回避した障害物は掃除終了後にアプリ上でその画像と位置情報を確認できるようになっています。ユーザーはこの報告画像を見ながら、障害物に対してどのよう対処すべきかを選択できます。
アプリに表示された障害物のなかで、床に落ちた靴下などの一時的なものに関しては、「一時的な障害物がここにあります」を選び、障害物を取り除いたあとに「もう一度清掃」を選べば、障害物が落ちていた場所だけを再度掃除するよう指示することもできます。
一方で、電源タップ周りなど次回以降も回避してほしい場合は「進入禁止エリアを追加」を選べば、次回以降も掃除せずに回避します。その際、禁止エリアの範囲はアプリ上で任意に指定が可能。つまり、「このコードは避けて(=このエリアには入らないで)」「これは無視してOK」など、それぞれの障害物に対して適切な対処を指定していけば、次回以降はその部屋に最適な掃除をしてくれるわけですね。
これらの対処方法を選ぶ際に「データベースに送信」を選べば、障害物の写真および対処方法がアイロボットのクラウドに送られます(送信は任意。送信しなくてもOKです)。これにより、世界中からたくさんの障害物のデータが集まり、ルンバの頭脳が学習してどんどん賢くなっていく、というわけ。ユーザーからのフィードバックにより学習した結果は、3か月に1回程度のアップデートにより、それぞれのルンバにインストールされる仕組み。このシステムは「世界60か国以上で販売され、4000万台以上の累計販売台数を誇るルンバならではの強み」と、アイロボットは胸を張ります。確かに、数にモノを言わせてデータを集める戦略はユーザーが多ければ多いほど有利。その意味で、アイロボットはユーザーという資産を最大限に活用し、還元しているといえるでしょう。
なお、ルンバ j7は日本に先駆けること約4か月前、既に米国で発売されていますが、靴・靴下・スリッパを回避できるようになったのは、この間の米国ユーザーからのフィードバックによる学習効果とのこと。ペットのフンに関しても、現在は犬と猫だけが保証の対象となっていますが、こうしたユーザーのフィードバックにより、今後はウサギやフェレットなど小動物のものも回避し、保証の対象となるかもしれません。
もうひとつ、j7は最上位モデルのルンバ s9+や従来モデルのルンバ i7と同様、家の間取りや家具の配置を学習し、マップを制作・保存して効率的に家中を掃除できます。マップを保存することで特定の部屋だけを掃除する、部屋の中の一部のエリアを掃除する、逆に特定の部屋だけを掃除しない、部屋の一部のエリアを掃除しない、といったことも専用アプリで簡単に設定できます。
ある特定のルーティーンを「お気に入り」として保存することも可能。例えば、食事をしたあとにキッチンとダイニングテーブル周りだけを掃除する命令を「食事」という名前でお気に入りを作れば、あとはワンタッチでその命令をこなしてくれます。「映画」というお気入りではソファの周りだけを掃除したり、「ニャンコ」ではペットの給餌ゾーン周りだけを掃除したりと、いくつもの命令を自由に設定できます。掃除したいエリアをイチから指定することなく、ワンタッチで意図した場所まで自動でルンバが移動して掃除してくれるのは、とても手軽でありがたいですね。
なお、ルンバ j7はスマートスピーカーにも対応しているので、例えば「ニャンコを掃除して」とスマートスピーカーに音声で話しかければ、お気に入りの内容を自動的に実行してくれます。加えて一時的な障害物も回避しつつ、入ってはいけない場所を避けてくれるわけですから、超お手軽におまかせ掃除が実現できるわけですね。
また、ルンバ j7+からクリーンベースの形状が変化しました。従来は縦に長い形状をしていましたが、今回から横に長い形状とし、従来モデルのルンバ i7+と比べて高さが約15cm低くなりました。これも、「ローカウンターやローシェルフの下に置きたい」というユーザーの要望に応えたもの。もともと、横幅としてはルンバ本体分のスペースを必要とするわけですから、縦のものを横にしても問題ないことになります。
クリーンベースを横型したことで、もう一つのメリットが生まれました。予備の紙パックを入れておくスペースが確保できたのです。クリーンベースには最大約60日分のゴミを溜めておけますが、約2か月は意外に長く、紙パックの予備をどこに仕舞ったか忘れがち。ですが、クリーンベース内に収納されていたら、すぐ予備のものに付け替えられるて便利です。
なお、本体のデザインも大きく変わっています。天面にカメラがなくなったことでスッキリし、お手入れがしやすくなりました。ルンバ i7はスタートボタンの他に、スポット清掃、ベースに戻るためのボタンが付いていましたが、ルンバ j7はベースに戻るのは長押し、スポット清掃はアプリ操作となり、ワンボタンのみのシンプルデザインです。
設置しやすくなり、アプリによる掃除のカスタマイズも手軽になったルンバ j7シリーズ。今後、世界中のユーザーから寄せられたデータによってさらに賢くなり、多くの“吸い込んではいけないもの”を回避できるようになるでしょう。特にペットを飼っている家庭にとって、フンのおこぼしはロボット掃除機導入の大きなハードルとなっていましたが、j7シリーズの登場によってそのハードルが大きく下がったのは間違いありません。個人的には、猫の吐瀉物も避けてくれればと思いますが……データの蓄積により、それも近い将来実現してくれるかもしれませんね。
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