新しい第3世代のAirPodsをレポートします。色は伝統のシグネチャーホワイトを継承しました。価格は23,800円です
AirPodsは、2016年12月に初代モデルが誕生。2019年3月にイヤホン、充電ケースの外観はほぼ変えずに、アップル独自設計のチップ「Apple H1」に刷新。ハンズフリーの「Hey Siri」による音声操作に対応したほか、充電ケースにQi互換のワイヤレス充電機能が追加されました。
第2世代のAirPodsにワイヤレス充電ケースを付属して販売されていた「AirPods with Wireless Charging Case」は25,080円でした。第3世代のAirPodsは23,800円なので、価格が1,280円ほど安くなっています。
進化したAirPodsは、デザインがアクティブ・ノイズキャンセリング機能を搭載する上位のAirPods Proに近い、丸みを帯びた柔らかな出で立ちになりました。音の心臓部としてアップル独自設計のダイナミック型“Appleドライバー”にアンプなどを格納する外殻部分の“ハウジング”は開放構造。トップの位置に空気の通り道となる小さな孔があります。
新しいAirPodsは、AirPods Proのようにシリコン製のイヤーチップを使わず、耳に乗せるように装着するイヤホンです。イヤーチップを使う耳栓タイプのイヤホンに慣れている方は、装着した時の安定感が気がかりかもしれません。
AirPodsの場合は、リモコンやマイクを内蔵するスティック状の本体(ステム)を外耳のくぼみにはめ込むように固定します。ステムの先端がこめかみに触れるように、しっかりと耳の中に本体を挿入すると、装着感はますます安定します。
ただ、すべてのイヤホン・ヘッドホンがそうであるように、耳のカタチによって装着感には個人差が生まれます。第2世代のAirPodsに比べると、新しいAirPodsはハウジングの厚みがわずかに増しているので、特に耳の小さい方はフィット感の変化に気がつくと思います。これから購入を検討される方は、事前に実機で確かめてみることをおすすめします。
新しいAirPodsは、アクティブ・ノイズキャンセリング機能を搭載していないぶん、AirPods Proよりも機能構成はシンプルです。iPhone/iPad/iPod touchとのワンタッチペアリング機能はもちろん継承しています。
Bluetooth機器のリストに並ぶAirPodsの名前の横に表示されている「i」(情報)アイコンをタップすると機能設定に入ります。肌検出センサーにより、耳からイヤホンを着脱する動作にサウンドの再生・一時停止が連動する「自動耳検出」がより正確にできるようになりました。
ユーザーのApple IDを使ってサインインしているデバイスであれば、例えばiPadで音楽を聴いている最中に自動的にAirPodsを切り替えてiPhoneで電話に出ることができます。この自動切り替え機能の有効・無効は「このiPhoneに接続」をタップして選択します。
「バッテリー充電の最適化」は、ユーザーがAirPodsを充電するサイクルをデバイスが学習して、内蔵バッテリーの劣化を軽減するための機能です。デフォルト設定の「オン」のままで良いと思います。
AirPodsはiOSやmacOSなどに標準搭載されている「探す」アプリから検索したり、他のアップルデバイスのユーザーたちとの連携により形成されている「探す」ネットワークを使って、紛失した時にアプリからトラッキングができるようになりました。これも、イヤホンのデフォルト設定である「オン」にして活用すると良いでしょう。
内蔵バッテリーによる連続再生時間は、第2世代のAirPodsが約5時間、充電ケースによるチャージを繰り返せばトータルで約24時間でした。新しいAirPodsはイヤホン単体で約6時間、充電ケースを合わせて約30時間にバッテリー性能が向上しています。約6時間も連続して使えれば、長めの移動やオンライン会議は不安なくこなせると思います。
もし、イヤホンのバッテリーが尽きていた場合、充電ケースで5分チャージすれば約1時間の音楽再生、または音声通話ができるだけのバッテリーが補えます。
新しいAirPodsはイヤホン本体だけでなく、充電ケースもIPX4等級の防滴仕様になりました。汗に対する耐性も高いので、スポーツシーンや暑い夏場の音楽リスニングも不安なく楽しめます。筆者は、キッチンで料理や皿を洗う時に動画や音楽を視聴する時間を心のオアシスとしているので、濡れた手でも不安なく扱える新しいAirPodsをとても頼もしく感じます。
外出先から帰宅した時に、AirPodsを除菌シートなどできれいに拭きたくなるものです。アップルは、2021年7月16日に「AirPodsのお手入れ方法」をサイトで公開しています。筆者が本稿を執筆している時点ではまだ新しいAirPodsに関するガイダンスが追記されていませんが、AirPods Proと第2世代のAirPodsの取り扱いに関する注意を踏襲すればよいと思います。防滴対応のイヤホン・充電ケースだからといっても、水洗いは禁物。開口部からアルコール除菌液などが浸入しないように気を配り、本体の外皮をやさしく拭き取るお手入れ方法が基本です。
新しいAirPodsのサウンドは、iPhone 13 Proに接続してApple Musicの楽曲、Apple TV+の映像コンテンツを視聴しながら確認しました。
第2世代のAirPodsよりも低音の再現力が驚くほど力強くリッチになりました。ロックやジャズのアップテンポな楽曲はベースの躍動感がとても鮮明になり、賑やかな屋外でもメロディラインをしっかりと追うことができます。活き活きとして伸びやかなボーカルも聴き応え抜群。開放型のイヤホンらしい、ヌケのよい透明感あふれる高音域もまた健在です。ピアノや弦楽器が奏でる音の階調感がとても滑らかに、かつ濃厚に感じられます。音楽の彩りの豊かさは、どちらかと言えばナチュラルバランスでクセのないAirPods Proのサウンドよりも新しいAirPodsの方がより特徴的に感じられました。新しいAirPodsは、ワクワクするような「たのしい音楽」を満喫できるイヤホンです。
動画再生もまたしかり。パワフルな低音が再生できるようになった新しいAirPodsでアクション系の映画やアニメを視聴すると、腹の底に響くような重低音に圧倒されます。人の声は、第2世代のAirPodsよりもいっそう、ふくよかに響くようになりました。バスや電車に乗って映像コンテンツを再生してみると、セリフ(ダイアローグ)が聞き取りやすくなったことを実感します。FaceTimeなどアプリによるハンズフリー音声通話も、人の声が一段と立体的に聞こえるように感じました。
開放型ハウジングのイヤホンは、密閉型ハウジングのイヤホンよりも音のクリアな抜け感、音場の自然な広がり感の描写に優れていると言われます。ダイアローグや効果音の定位が立体感を増したことと相まって、新しいAirPodsは「空間オーディオ」のコンテンツ再生にとてもよくマッチします。ダイナミック・ヘッドトラッキングにも対応しているので、よりいっそうコンテンツにのめり込める楽しさがあります。
AirPodsは開放型ハウジングのイヤホンなので、周囲に人がいる静かな場所で使う場合は“音もれ”による迷惑をかけないように気をつけて使いたいものです。ただ、新しいAirPodsは比較的小さな音量でもメリハリの効いたサウンドが聴けるので、屋外で使っていたら気付かぬうちに目一杯ボリュームをあげて音もれしていた、ということもあまりないかと思います。これまでにAirPodsを使っていた人は、新しいAirPodsに買い替えたら、今まで通りの感覚で音量を上げてしまうと少しうるさく感じるかもしれません。特に、屋外を移動しながら音楽などを聴く場合は、音量設定に注意してみてください。
新しい第3世代のAirPodsは、従来のモデルとはまたひと味違う個性的なワイヤレスイヤホンです。空間オーディオのダイナミック・ヘッドトラッキングに代表されるようなアップルらしいイノベーションをいち早く最前線で体験できる魅力も含めて、個性あふれる粋なラインナップがAirPodsシリーズに加わりました。AirPodsの“おかわり”を大いにオススメします。
やまもとあつしジャーナリスト兼ライター。オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。独ベルリンで開催されるエレクトロニクスショー「IFA」を毎年取材してきたことから、特に欧州のスマート家電やIoT関連の最新事情に精通。オーディオ・ビジュアル分野にも造詣が深く、ハイレゾから音楽配信、4KやVODまで幅広くカバー。堪能な英語と仏語を生かし、国内から海外までイベントの取材、開発者へのインタビューを数多くこなす。
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