量産型のポータブルミュージックプレイヤー「ウォークマン」が誕生してから40年以上。「NO MUSIC, NO LIFE」というキャッチコピーどおりに、音楽を常にまとって生活している人は多いことでしょう。
でも、自宅内ならまだしも、車が行き交う路上や、走行音や車内放送のある電車内、会話している人の多いカフェの中などでは、自分が聞きたい音を聞くにも一苦労。仕方なくボリュームを上げ続けた結果、若くして高音域や低音域が聞こえない、もしくは通常の話声さえ聞き取りづらい難聴、また耳鳴りなどを経験することがあります。
WHOでは、週40時間未満、80db以下のボリュームに抑えることで、そのような危険を避けられるとしています。85db以上の音を聞き続けると、耳の中で音の振動を電気信号に変える有毛細胞が傷つき、壊れ、機能しなくなってしまうからです。
外でも自分の聞きたい音を聞き、かつ耳を難聴リスクから保護するのにうってつけなのが、ノイズキャンセリング機能付きの音響機器です。
ノイズキャンセリングには、耳孔にぴったりフィットする、いわば耳栓のような役割をするパッシブノイズキャンセリングと、外部の音を専用マイクで拾い、その波形を打ち消す音を出すことで電子的に音を消すアクティブノイズキャンセリングという種類があります。
その両方を兼ね備えているのが、2021年12月20日に好評のうちにキャンペーンを終了した「nuraphone」(ニューラフォン)。なんと、オーバーイヤー型でありながら、内側にカナル型のイヤーチップを備えており、二重のパッシブノイズキャンセリングと、アクティブノイズキャンセリングで完璧に外部の音を遮断する「クリーンノイズキャンセル機能」を搭載しているのです。
nuraphone(Amazon)このデバイスであれば、未来ある若者の耳を、難聴や耳鳴りから守ってくれるに違いありません。
クラウドファンディングキャンペーンが終わり、一般販売の始まったnuraphoneを試用する機会を得たので、さっそくレビューしていきます。
nuraphoneは一般的なヘッドホンとほぼ同じようなサイズ感です。高さが190mmで幅が170mm。イヤーカップの直径は88mmです(それぞれ、サイズは約)。重さは329gで、少し重いのではと訝しがるかもしれませんが、イヤーチップの密着感を高めるには、このくらい重量があったほうが良いというのが、実際に使ってみた感想です。
イヤーカップは、耳を覆って外部の音を遮断するためだけにあるわけではありません。耳孔に挿入するイヤーチップは通常のメロディーを、イヤーカップスピーカーは低域の音を再生します。カップ全体が振動するような再生の仕方をするため、コンサートホールにいるような音の感じ方ができる、と説明されています。
内蔵バッテリーでの連続再生時間は最大20時間。電源ボタンを搭載しておらず、装着して電源ON、外してスリープから電源OFFへと切り替わります。3台のデバイスとの接続プロファイルを保存可能で通話もできるため、リモートワークのオンラインミーティングにも使えます。
nuraphoneを音源であるデバイスと接続する方法は2種類。Bluetoothまたは有線です。Bluetoothでは、aptX HDに対応。有線では、nuraphone独自端子と、USB Type-Aまたは35mmヘッドホンジャック端子用の2つが同梱されています。そのほか、Lightning、USB Type-C、Micro USBと接続するケーブルをオプション品として購入することもできます。
PCやスマートフォン、またBluetooth接続可能なポータブルミュージックプレーヤーと、何も考えずにBluetooth接続してもいい音で聞けますが、騙されたと思って専用アプリnuraアプリをインストールしたスマホと接続し、パーソナライゼーションしてから使い始めることをおすすめします。
さて、ヘッドフォンまたはイヤホンのパーソナライゼーションというと、アプリを立ち上げて「ピー」とか「ブー」という、聴力検査のようなものが求められるのが一般的です。ハイスペックなイヤホンでは、耳孔内の凹凸を超音波走査して最適な聞こえになるよう調音してくれるというものもありましたが。
nuraphoneの場合も、それに近く、機械的な低音や高音が1分ほどの間、nuraphoneから聞こえてきます。ユーザーはできるだけ静かな環境で、じっと待っているだけ。何もしなくても、自動的にパーソナライゼーションが完了します。
その後、聞こえの確認を行います。nuraオリジナルの音楽をデフォルト(「ニュートラル」)と「パーソナライズ済」でスイッチしながら聴き比べます。
それから、イヤーカップが再生する低音のレベル(反響レベル)の調整をし、操作方法のチュートリアルを視聴。左右にひとつずつあるタッチポタンにコマンドを割り当てて完了です。反響レベルは、後からでも変えられるので、気分に応じて設定し直しましょう。
パーソナライズされた音は、デフォルト(ニュートラル)のものと比べて格段に“いいもの”となります。nuraphoneはLDAC(96KHz/24bit)ではなく、48KHz/24bitまでのハイレゾ音源に対応するaptX HDのコーデックに対応しています。
筆者は、バカの一つ覚えのように、「ハイレゾ音源をワイヤレスで再生するんなら、LDACに対応してなきゃあかんがな」と考えていたのですが、自分の耳に最適化された鳴り方であれば、「aptX HDでも充分じゃん!」と、すっかり改宗してしまいました。もちろん、ほかの再生デバイスでは、そういうわけにはいかないと思いますが。
具体的にどのように違うのか。ハイレゾで購入した音源のほか、Amazon Prime MusicのULTRA HD(44.1KHz~192KHz、平均ビットレート3730kbps。ハイレゾに相当)などを再生してみました。
もちろん、それぞれミュージックプレイヤーアプリを立ち上げて聴くだけであれば、違いがわかりません。音楽再生中に、nuraアプリを起動させ、「ニュートラル」「パーソナライズ済」を切り替えることで、違いを確認できるのです。
すると、パーソナライズ済では、1音1音がクリアに、粒立ちして聞こえますが、ニュートラルに戻すと、少しくぐもったように聞こえます。音の専門家ではない筆者のような感覚の持ち主では、パーソナライゼーションした音を聞いたことがなければ、ニュートラルのままでも「お、いい音!」と気づかないかもしれませんが。
冒頭で、パーソナル音響機器のために、若くても難聴や耳鳴りになるかもしれない、ということを書きました。では、nuraphoneは本当にそれら耳疾患から、音楽を愛する人たちの耳を守ってくれるのでしょうか。
もちろん、過度にボリュームを上げて、日々10時間以上も音楽を聴き続けていれば、nuraphoneを使っていても、耳が保護されるということはありません。
しかし、水洗トイレの音までシャットダウンしてくれるほどのノイズキャンセリング機能の高さ、パーソナライゼーションされたクリアな音は、小さなボリュームでも満足感のある音楽体験をもたらしてくれるでしょう。
初めて、このデバイスに出会ったときに「これは耳の救世主になるに違いない!」と、オーバー気味に感動しましたが、じっくり使ってみた結果、「将来の聞こえが気になるなら、投資しておいたほうがいい」とまで思うようになりました。
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