2カ月ほど前、SNS上で知人の作曲家がAmazonで売っている怪しいオーディオインターフェイスを取り上げており、目を引いた。それは「Muslady」という聞いたことのないメーカー名の機材で……
Muslady 外部オーディオミキシングサウンドカード USBオーディオインターフェイス複数の効果音 内蔵充電式電池 ライブストリーミングチャーター音楽録音用
……と記載され、価格は破格とも言える2,594円だった。
これは試してみねば、と思ったのと同時に頭に浮かんだのが“AliExpress”だった。というのも、たまたまその日、別の知人がSNS上でAliExpressを取り上げていたからだ。
試しにAliExpressへアクセスしてみると、日本語表記や商品詳細には英語表記が入り交じる、怪しい感じの通販サイト。ここで“V8”を検索してみたところ、案の定似た筐体の機材がいっぱい出てきた。
V8に似た筐体の機材がズラリ……写真をよく見てみると、メーカー名やデザインが微妙に異なっている。また値段も700円から2,600円程度まで存在する模様。ただ、基本的にはどれも同じものに違いないと判断し、送料込みで一番安いものをセレクトし、イチかバチかで注文してみることにした。
その値段は1,587円。Amazonの2,594円でも激安だが、それを上回る安さなので、まったく動かなかったとしても、大きな痛手にはならないだろう。クレジットカード番号を入力するのに躊躇したが、AliExpressのネットの評判を見る限りは、大丈夫そうだったので、登録してみた。
しかし。数日で届くのかなと思っていたが、1週間待っても、2週間待ってもやってこない。
AliExpressの注文履歴を見てみると、出荷はされているようなのだが、その先で止まっている。AliExpressをよく使うという知人に聞いたところ、激安送料を実現するために船便を使っており、通関にも時間がかかるから、気長に待つしかないという。
半分忘れかけていた1カ月以上が経過したある日、「商品は間もなくお手元に届きます!」というメールが来たかと思ったら、すぐに郵便配達がやってきて、中国からの荷物が届いた。送料だけで1,587円の価格を上回ってしまいそうな気もするが、ちゃんと届いてくれただけで、ちょっぴり嬉しくなった。
1カ月以上経過して到着箱を振るとカタカタという音がするのが気になるところだったが、さっそく箱を開けてみると、それなりにガッチリしたアルミボディの機材が現れた。
箱を振ると“カタカタ”と音が鳴る開梱するとアルミボディの機材が現れた外形寸法は実測で約125×105×255mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約235g。iPhone 11 Proと並べてみると大きさの雰囲気も分かるだろう。
横幅は実寸約125mm重量は約235giPhone 11 Proとのサイズ比較本体と共に、4本の白いmicro USBケーブルが付属しているのだが、これがまた怪しいケーブルとなっている。1つはmicro USB - USB TypeAのごく普通のケーブルなのだが、残り3本はmicro USB - ステレオミニという見たこともない妙なもの。「何だこれ?」という疑問とワクワク感でいっぱい。そもそもこの製品で何ができるのか、内容を詳しく調べもせずに、好奇心だけで買ったこその楽しみなわけだが、やはり先ほどから聞こえる“カタカタ”は気になる。
怪しい製品に付属されていた「micro USB - ステレオミニ」ケーブルカチャカチャいうオーディオインターフェイス、V8通常であれば、即刻返品手続き扱いなのだろうが、中国からの個人輸入だし、あんまり面倒なことはしたくない。そもそも送料込みで1,587円なのだから、まぁこんなものなのだろう。ただカタカタの正体を探るべく、ネジとノブを取り外し、シャーシを開けてみることにした。
V8のシャーシを開けてみた開けると、カタカタの原因がすぐに分かった。このV8にはニッケル水素と思われるバッテリーが内蔵されているのだが、その接着が甘く、剥がれてしまったために、カタカタいっていたのだ。
ニッケル水素のバッテリが剥がれていた……普通に見て、完全な不良品である。
しかも、基板を見て驚いたのはネジ穴が4か所あるのに、実際には2か所しか止まっていないという手抜きっぷり。これぞTHE安物の粗悪品であることは間違いないが、それ以外の箇所はパッと見て異常はなさそう。
スイッチとボリュームはいっぱいあるが、基板上の回路を見るかぎり、すごくサッパリしている。48PINの小さなチップがメインの処理回路なのだろう。チップの名称はマスクされているため判別はつかない。横には、クリスタルのクロックが1つ。あとは小さなトランジスタやコンデンサ、抵抗が並んでいるという感じだ。
内部基板メインと思われる48PINのチップとりあえず接着剤でバッテリーを固定するとともに、手持ちのネジで基板の4カ所をしっかり固定。試しにパワーボタンを押してみると、PCとの接続もしていないスタンドアロンの状態だというのにLEDが点灯した。単独動作するミキサー的機能を持った高級オーディオインターフェイスは存在するが、それに匹敵するものなのか、はたまた、タダのガラクタなのか……。面白そうで、ますます期待が高まる。
試しにパワーオン。スタンドアロン状態でLEDが点灯したシャーシを元に戻し、ネジ止めし、ノブを取り付けて、本来の形に戻す。改めて見てみると、そこそこカッコイイ機材なような気もしてくる。が、左上にあるタイトルを見てみると「LIVE The sound card V8」書かれていて笑ってしまった。「そもそも、これボックスであって、カードじゃないから!」。なんとも色々といい加減な機材である。
筐体左上に「LIVE The sound card V8」の文字リアパネルを見てみると、見たことのない不思議なインターフェイスだ。
micro USB端子が4つ並び、3.5mm端子が3つ、そして6.3mm端子が1つ。micro USBにはLINE1、LINE2、Accompany Instrument、Chargingと記載されている。また3.5mmのほうにはEarphone speaker、Headset、Condenser mic、Dynamic micとあって、まさに突っ込みどころ満載。なんでこんなにいっぱいUSB端子があるのか、いっぱいあるのにPCと接続できそうなポートがない、コンデンサマイク端子なのにミニジャックってどういうことなのか?
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