■数多くのOEMを手掛けてきた実績を武器に、自社ブランドDEERを設立DEERは、ローヤル産業が擁するスピーカーの自社ブランド。ホーム用励磁スピーカーとカーオーディオ用モデルを複数機種展開しているが、ここでは先頃完成したばかりの同社のデモカーAudi Q5に搭載されたカーオーディオ用スピーカー「RCXシリーズ」をメインに紹介しよう。本題に入る前に、ごく簡潔にローヤル産業の沿革を記しておきたい。今年設立60周年(創業75周年)を迎える同社は、知る人ぞ知るスピーカーメーカーと言ってよい。設立当初から他社ブランドのOEM開発と生産を引き受けており、全盛期の「CORAL」(70年代にFOSTEXと人気を二分した国内スピーカーメーカー)を影で支えた。現在は主に内外のカーオーディオブランドや、テレビ/スマホ用のスピーカーの開発を請け負っている。こうしてみると、黎明期から今日までの日本のオーディオを影で支えてきた1社といっては言い過ぎだろうか。もしかすると貴方が使っているスマホや自宅で観ているテレビに、ローヤル産業の技術が活かされたスピーカーが搭載されているかもしれない。2014年より自社ブランドとしてスタートした「DEER」。ホーム用として励磁型スピーカー3モデルもラインアップするそんな黒子的な存在だった同社だが、それは「今までは」、という注釈がつく。2014年、同社は満を持して自社ブランド「DEER」を立ち上げる。半世紀余りの他社ブランドとの仕事を通じて培ったテクノロジーやノウハウを傾注し、オリジナルの励磁型スピーカーを開発。17年にはその技術を永久磁石に転用して車載用スピーカー市場にも進出した。いずれも他社がやっていない独創性を重視している点がセールスポイント。3代目となる現社長の小久保公二氏には、猛烈な自信と絶対的な後ろ盾がある。共に歩んできた技術部長の深澤重樹さんとの強力なタッグがあるからだ。ローヤル産業社長の小久保公二氏(左)と、スピーカー開発を一手に手掛ける深澤重樹氏(右)。創業当初から振動板、ユニットも含むすべてのスピーカーを自社で設計できることに大きな強みを持ち、自社ブランドでしかできないことをやろう、という思いからDEERブランドを立ち上げたのだという■採算度外視で生み出したカーオーディオのフラグシップシリーズ「RCX」今回試聴したRCXシリーズはDEERのフラグシップ機であり、メーカーサイドにてクロスオーバーネットワーク等の用意のない、純粋なマルチアンプ用スピーカーだ(他に姉妹モデルのRJシリーズがある)。採算を度外視し、妥協を排して持てる技術を傾注した自信作とのこと。「RCXシリーズ」は17cmウーファーの「RCX170」、ミッドレンジ「RCX080」、トゥイーター「RCX050」の3モデルから構成される。価格は価格は「RCX170」&「RCX050」が1,078,000円(税込)、「RCX080」が275,000円(税込)基本的なマテリアルやメソッドは、ホーム用励磁スピーカーRFシリーズのそれを活用しているが、温度・湿度環境や振動など、ホーム用とは使用状況が異なる車載用ならではのモディファイが盛り込まれている。「RCXシリーズ」を実際に取り付けたところ17cmウーファーの「RCX170」は、真鍮削り出し後にニッケルクロムメッキ加工したフェイズプラグや、無垢アルミ材から削り出した磁気回路カバーなど、実に贅沢な仕様。強力なダンピングファクターを目指し、磁束密度が従来比25%増しとなっている。ミッドレンジドライバーの「RCX080」はカーボンダストキャップを採用することで応答性を重視。取り付け性も考慮されたドライバーだ。トゥイーター「RCX050」は、振動伝播速度を重視し、カーボン製ダイアフラムを採用した。フランジリングはデータ検証や試聴の繰り返しで決定された形状による、無垢真鍮材からの削り出し。仕上げはニッケルメッキとなっている。これらのドライバーユニットは、いずれも設計者(深澤氏)自ら手組し、測定した後にペアマッチングが取られ、ミュージックでのエージングを行った後に出荷されるという、正真正銘のハンドメイド、メイド・イン・ジャパンである。■ユニットの動的なS/Nも良好で、圧倒的な情報量を描き出す
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