新型コロナ第6波の到来が心配されるも、2回のワクチン接種もほぼ終わり新規感染者数も抑えられる中、世間は落ち着きを取り戻しつつあるようにも見えます。私は幸い、新型コロナに感染することはなかったものの、思わぬ“副作用”の影響はしっかりと受けました。在宅勤務や不要不急の外出控えによる体重増加です。通勤や取材で平均9000歩以上だった歩数も、在宅勤務ではせいぜい1000歩程度。どんなに頑張って自宅でオンライン取材を重ねようとも、当然ながら運動量は増えません。
2020年10月に健康診断を受けると、前回受診した2018年10月に比べて体重が4.3kg増加。BMIは基準範囲の上限に近い「24.2」となっていました。中年太りとの相乗効果なのか、20歳前後の体重と比べるとかれこれ10kg増。これはマズイと食事記録アプリも活用してみましたが、うまくいきません。というのも、ズボラな私にとっては記入が面倒なうえに、真面目に記入すれば記入するほど「摂取カロリー過剰」と表示されるのですから、やる気はどんどん低下するばかり…。
そこで頼ったのが、個人的に大好きなデジタルガジェットです。今回目を付けたのは、「世界で唯一、摂取カロリーを自動計測できる」と謳うスマートバンド「GoBe3」(米Healbe社、日本発売は2020年10月1日)。メーカー希望小売価格2万9700円(税込)は安くはありませんが、“これも勉強のうち”という、デジタルガジェット購入時のお決まりの言い訳を胸に、思い切って購入しました。摂取カロリーのほか、消費カロリー、水分バランス、ストレスレベル、睡眠、脈拍、歩数(距離)を計測でき、時計機能も備えています。
米Healbe社の「GoBe3」。生体インピーダンスセンサー、光学式脈拍センサー、GSR(ガルバニック皮膚反応)センサー、9軸センサーを搭載する。アプリはiOSとAndroidの両方に対応する。2021年11月のアップデートにより、睡眠計測に関して昼間の睡眠(昼寝)も含めた24時間追跡・分析機能が実装された(写真:Healbe Japanのプレスリリースより)[画像のクリックで別ページへ]同製品では、摂取カロリーの自動計測について「FLOW Technology」という独自技術を用いるとしています。消化された食物のグルコース(ブドウ糖)は小腸から取り込まれて血管に入り、血液により全身に送られ、毛細血管から細胞間の間質液を介して細胞に届けられます。同社によれば、グルコースの濃度が上昇すると細胞はグルコースを吸収して水を放出するため、その細胞からの液体の流入出をインピーダンスセンサーによって計測し、計測値をFLOW Technologyのアルゴリズムにより分析することで、カロリー摂取量を推定するとのこと。
グルコースと言えば、血糖値測定について各社が積極的に取り組んでいます。「IDF糖尿病アトラス」によれば、世界の糖尿病患者は2019年に4憶6300万人となり、2030年には5億7800人まで増加すると予測されています。糖尿病患者の多くは血糖自己測定を必要としており、採血のための指先穿刺は苦痛を感じるケースも多く手間もかかるとされています。巨大市場に向けて、より負担の少ない血糖自己測定に各社が取り組むのも当然でしょう。
手軽な持続血糖測定としては、米Abbott社の「FreeStyleリブレ」が有名です。こちらは、センサー本体を腕などに貼り付けることで「フィラメント」と呼ぶ微細な針を皮下組織に挿入し、間質液中のグルコース濃度を測定するというもの。間質液中のグルコース濃度と血糖値の相関関係から、血糖値の変動を推測します。日本では2021年2月に公式のスマートフォン(スマホ)アプリがリリースされ、センサーの計測データをスマホで直接読み出せるようになり、“デジタルガジェットっぽさ”がぐっと増してきました(関連記事:外出先でさりげない血糖測定、スマホをかざすだけ アボットの新アプリ)。ネット通販でも入手可能ですが、14日間連続装着の使い捨て式で価格が高いためか、健常者で使おうという人はほとんどいないようです。
非侵襲の血糖値計測では、指先に赤外線レーザー光を照射して血糖値を計測する「モバイル型血糖値センサー」をライトタッチテクノロジーが開発しています(関連記事:『指に光』で血糖値測定、実用化近付く)。特定波長の光をグルコースが吸収することを利用したもので、同社ホームページによれば2023年に販売される予定です。同社では「カーボヘルスモニター」としてヘルスケア領域(糖尿病予防)に向けた製品も開発していますが、やはり医療機器としてのモバイル型血糖値センサーの方が優先されているようです。
スマートウォッチでも血糖値測定機能が検討されています。特許取得や大学との共同研究発表などから、米Apple社の「Apple Watch」や韓国Samsung Electronics社の「Galaxy Watch」が血糖値測定機能を搭載するのではと噂されてきましたが、2021年時点では実現しませんでした。2022年には搭載されるとの見方もありますが、開発が難航しているとの見方もあり、先行きは不透明です。
こうした状況の中、米Healbe社がグルコースの吸収を利用しながらも血糖値をターゲットとせず、ゆるく摂取カロリーを見ることを目的としたのは、うまい戦略なのかもしれません(特に狙ったわけではないのかもしれませんが)。
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