インターネットプロバイダのスタートアップ MyRepublic は、2018年末までに株式公開を計画している。本日(7月6日)シンガポールで開かれたメディアイベントで、同社 CEO の Malcolm Rodrigues 氏が明かした。
上場先の市場は未確定である。同社はシンガポールに所在することから、シンガポール証券取引所(SGX)を検討しているが、香港やオーストラリアなど他の可能性が除外されたわけではない。CFO の Lavinia Koh 氏が記者団に語ったところでは、バリュエーション、流動性、投資家などの要因を判断して決定するという。IPO で見込む調達額について、同社は明言しなかった。
MyRepublic は IPO で得た資金を活用して、東南アジアの7つの市場への展開を計画している。具体的には、マレーシア、タイ、ベトナム、カンボジア、フィリピン、ミャンマー、スリランカである。
現在、資金調達プロセスを実行中である。同社には、シンガポールの電話会社 M1の過半数株の取得に向けて動いているという「噂」があり、Rodrigues 氏はこのことが事態を複雑にしていると指摘する。彼が言う M1買収の「噂」とは、Bloomberg が5月末に報じたものだ。
この噂の否定材料としては、MyRepublic はあくまでインターネットプラットフォームの企業であり、電話会社ではないことが挙げられる。Rodrigues 氏は過去に MyRepublic が買収に興味を示したことを認めたが、現在のミッションにそぐわないことから方針を転換したと述べた。同社のミッションとは、物理的なインフラを持たずに、現実世界でサービスを提供するオンライン企業になることである。
同社は7,300万米ドルの資金調達を見込んでおり、これにより IPO が可能になるとしている。Rodrigues 氏は、3億9,700万米ドルのバリュエーションで資金調達に臨むとの計画をメディアに語った。調達した資金の大部分はインドネシアでのファイバー回線の敷設と顧客獲得のために投じられる。CEO によると、同社の複数の市場の合計として、毎月1万7,000人の新規顧客を獲得しているという。
また同社は、シンガポールで仮想移動体通信事業者(MVNO)として携帯電話サービスに参入することを発表した。シンガポールの通信事業者3社(Singtel、Starhub、M1)から帯域を購入する。M1の回線を使用する Circles.Life に次ぎ、シンガポールでは2社目の MVNO 事業者となる。サービス開始は10月の予定。MyRepublic はすでにこのうち1社と契約を締結したが、相手企業の内容は開示できない、と Rodrigues 氏は述べる。2018年には同社が展開する他の市場へ拡大する予定。
Rodrigues 氏は MyRepublic が取り入れたいと考えているアプローチについて、トランスポート業界で言えば Uber、ホスピタリティ業界で言えば Airbnb にたとえている。
MyRepublic はオンラインのインフラに的を絞った無駄のない運営をしているため、低コスト化と迅速な展開が実現されている。
弊社は60日の内にシンガポールからニュージーランドへ展開することができました。(Rodrigues 氏)
これは従来よりも少人数のチームで同社が運営に当たれるということも意味する。一例として、同社のオーストラリアの従業員は、現在わずか40名だ。
こうした特徴から、Rodrigues 氏によると、新規マーケットに進出する際はたった2%のシェアでスタートできるのだという。全市場で5%のシェアを目標としているが、現状で達成できたのはシンガポール市場のみだ。
インドネシアで独自のインフラを敷設したことは、このような通常の計画からやや外れるものだと Rodrigues 氏は述べる。同市場では特有のニーズがあり、このような対応が必要になったという。
現在、シンガポール、インドネシア、オーストラリア、ニュージーランドでサービスを提供している。同社によると、2016年中盤以降、シンガポールではキャッシュフローがプラスになり、また、2017年5月の時点でインドネシアでの EBITDA がプラスであった。2018年末までには全てのマーケットで EBITDA がプラスになることを見込んでいる。
年間収益のランレートは7,960万米ドルに上ると発表している。
昨年 MyRepublic は、シンガポール第4の通信企業を目指してキャンペーンを展開したものの、オーストラリア企業の TPG Telecom に敗れる結果となった。
【via Tech in Asia】 @techinasia
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