Siriによる操作に特化したApple Musicの新サービス「Voiceプラン」が登場。料金が月額480円と安いのが魅力です
月額固定料金で約9,000万もの楽曲を“聴き放題”で楽しめるアップルの定額制音楽配信サービス「Apple Music」に、Siriによる操作に特化した「Voiceプラン」が新しく加わりました。月額480円という割安感が特徴のVoiceプランはこれまでの個人プランと何が違うのか、どんな音楽ファンに向いているのか、その始め方とともに解説したいと思います。【画像】VoiceプランのApple Musicは、Siriに音声でリクエストする方法が書かれているセクションを新設。VoiceプランならではのインターフェースといえますSiriによる操作に特化したVoiceプランが登場Apple MusicのVoiceプランの料金は月額480円で、月額980円のスタンダードな「個人プラン」より500円も安く楽しめるサービスです。個人プランと比べた時に“できること”の違いについて、詳しくは後半で触れますが、最も特徴的なのはVoiceプランがアップルのAIアシスタントであるSiri(シリ)による操作に特化していることです。例えば、アップルのCarPlayに対応する車載エンターテインメントデバイスにiPhoneをつなぎ、ドライブを楽しみながら音楽を聴く機会が多い人には、Apple MusicのVoiceプランが最適です。ディスプレイを持たないSiri搭載のスマートスピーカー、HomePodシリーズをメインにApple Musicを楽しむのであれば、通常の個人プランではなくVoiceプランでも不自由ないかもしれません。3カ月の無料体験が可能Apple Music Voiceプランは、12月14日から日本を含む17カ国でスタートしました。iPhoneをiOS 15.2にアップデートしてから、HomePodのOSもバージョン15.2に更新しましょう。Voiceプランは、iOS 15.2を搭載するiPhone 6s以降、iPadOS 15.2搭載のiPad、tvOS 15.2搭載のApple TV 4KとApple TV HD、watchOS 8.3搭載のApple Watch、およびmacOS 12.1搭載のMacで利用できます。HomePodやCarPlayで楽しむためにはiPhoneが必要です。ブラウザー版のApple Musicと、Android版Apple Musicアプリには対応していません。Voiceプランでは、Siriに「Apple Music Voiceを開始して」と話しかければ、音声操作でサブスクリプション登録ができます。筆者がHomePod miniを使って音声による登録を試した動画をご覧ください。Siri経由でサブスク登録を済ませると、最初は無料お試し版として7日間楽しめるサービスにつながります。でも、実は登録を行ったアカウントにクレジットカード情報などの決済方法を追加すると、さらに3カ月無料で試せるトライアル期間が利用できます。Siriの音声操作に最適化したユーザーインターフェースを採用Apple MusicのVoiceプランと、個人プランをベースとするファミリープラン・学生プランは、基本的に「同じSiriによる音声操作」に対応します。ただし、ユーザーのライブラリやオリジナルのプレイリスト作成など、「個人プランにはあってVoiceプランにない機能」はSiriに頼んだところで使えません。Voiceプランの特徴は、Apple Music(=ミュージックApp)のインターフェースが一部Siriによる音声操作に最適化されていることです。例えば、画面下のメニューに並ぶ「今すぐ聴く」を開くと、ページのトップは「Siriに話しかけてみてください」というセクションになっています。こちらには、ユーザーの好みや再生傾向を学習したレコメンドやおすすめの新曲が並びます。画面に並ぶパネルには、そのプレイリストや楽曲を再生する時、Siriに話しかけるコマンドが書かれています。「ライブラリ」には、iPhoneに保存されている音楽ファイルやiTunes Storeで購入して端末にダウンロードした楽曲が並びます。前述の通り、VoiceプランではApple Musicを再生中に気になった楽曲を「ライブラリに追加」することはできません。代わりに「今すぐ聴く」のページを下にスクロールすると現れる「もう一度再生」のセクションから、ユーザーが再生したプレイリストやステーション、Apple Music 1のライブ配信チャンネルを参照して繰り返し聴くことができます。Voiceプランは、Apple Musicの楽曲とプレイリストの大半にアクセスが可能です。一方で、ミュージックビデオの再生、ロスレスオーディオとドルビーアトモスによる空間オーディオのカタログが再生できないところが個人プランとの違いになります。歌詞の表示や、iPhone/iPadのストレージにキャッシュしてオフラインで聴くこともできません。Siriへの音声リクエストをマスターしようSiriによるリクエストは、例えば以下のように行います。【曲・アルバム・アーティスト・年代を指定する】Hey Siri、宇多田ヒカルのAutomaticを再生してHey Siri、アデルの最新アルバムを再生してHey Siri、70年代のジャズの名曲を再生して【ムードやアクティビティを指定する】Hey Siri、リラックスできる音楽をかけてHey Siri、ジョギングにぴったりな音楽が聴きたい【再生している楽曲に関する情報を尋ねる】Hey Siri、これは誰の曲Hey Siri、この曲が入っているアルバムを教えて【音楽再生のコントロール】Hey Siri、一時停止Hey Siri、次の曲Hey Siri、音量を上げてSiriによるApple Musicの再生操作はミュージックアプリを開かなくても、iOSのホーム画面から直接アクセスできます。アクセシビリティの設定を変更すれば、文字タイプ入力によりSiriにリクエストを伝えることもできます。屋外でiPhoneを使ってVoiceプランの再生を楽しむ場合、iPhoneのサイドボタンを長押ししてSiriを呼び出せるようにするか、AirPodsのリモコン操作(ステムの感圧センサーを長押し)をすると「Hey Siri」のひと言が省けるので、周りの目を少し気にせずに使えそうです。画面タップによる操作はどこまでできる?Voiceプランでもミュージックアプリの画面タップ操作は可能です。例えば、右下に並ぶ「検索」メニューからテキストを入力してアーティストや楽曲を探すこともできます。ただし、検索して見つかった楽曲をタップして再生する操作ができません。楽曲を選択すると個人プランへのサブスクリプションを促すバナーが表示され、30秒間のプレビュー音源が再生されます。見つけた楽曲やプレイリストを表示しながら「Hey Siri、はじめてのMISIAを再生して」と言った具合にSiriにリクエストすると、曲を頭からフルに聴くこともできます。ただ、洋楽やクラシックの楽曲はSiriに曲名やアルバム名を正確に音声操作で伝えることが難しいので、Siriの文字タイプ入力を併用するとよいでしょう。プレイリストやアルバムは、一度再生すると「今すぐ聴く」の「もう一度再生」リストに加わります。以降は、ミュージックアプリの画面タップ操作により冒頭から再生できますが、別の楽曲へのスキップはSiriにリクエストする必要があります。また「このアルバムの6曲目を再生」といった具合に、曲順を飛ばしてリクエストすることはできません。ユーザーの音楽の好みを学習してくれる特に、聴きたい曲やアーティストのあてもなく、Apple Musicをまったりと流したい時間もあります。そんな時には、Siriに「私が好きそうな曲をかけて」「トゥデイズ ヒッツを再生して」などのリクエストを送ると、直近の再生履歴を学習して作られたステーションが再生されます。「アリス=紗良・オットみたいな音楽をかけて」といった漠然としたリクエストにも応えてくれます。Apple Musicは学習を繰り返すほど、ユーザーの音楽やアーティストの好みに近い作品を「今すぐ聴く」の候補にも揃えてくれます。楽曲の再生中に「Hey Siri、この曲好き/好きじゃない」と伝えて好みを学習させることもできます。VoiceプランはApple Musicを熟知した人におすすめ筆者は、長年Apple Musicを愛用しています。今回新しいVoiceプランを試してみて、すでに個人プランを長く利用してApple Musicのユーザーインターフェースを熟知している方は、Voiceプランも難なく使いこなせるだろうと思いました。でも、個人プランから乗り換えてしまうと、ライブラリやオフライン再生のような便利機能が使えないし、ロスレスオーディオや空間オーディオのようなApple Musicならではの“うまみ”も消えてしまいます。例えば、自宅などのプライベート空間と分けて、職場ではBGM的にVoiceプランでApple Musicを聴くという楽しみ方はアリだと思います。このような使い方をする場合は、それぞれに別々のApple IDを用意する必要があります。これからApple Musicを初めて使う人は、まず3カ月のトライアル期間中に個人プランから無料体験を始め、Apple MusicのインターフェースやSiriによる操作にもある程度慣れておくことをおすすめします。Apple Musicのサービスが気に入ったら、4カ月目以降にVoiceプランに切り換えることも本格的に検討すれば良いと思います。 著者 : 山本敦やまもとあつしジャーナリスト兼ライター。オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。独ベルリンで開催されるエレクトロニクスショー「IFA」を毎年取材してきたことから、特に欧州のスマート家電やIoT関連の最新事情に精通。オーディオ・ビジュアル分野にも造詣が深く、ハイレゾから音楽配信、4KやVODまで幅広くカバー。堪能な英語と仏語を生かし、国内から海外までイベントの取材、開発者へのインタビューを数多くこなす。
山本敦
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