そもそも半導体が発明される以前は多くの機器に真空管が使われていた。最初は通信用として、それから増幅用にも使われるようになった。増幅用途に使われる真空管の仕組は、真空中の陰極(カソード)、またはフィラメントを熱して熱電子を飛び出させ、プレートで捕獲する。その間に電子の流れを制御するグリッドを配置して電気信号をコントロールする。これが3つのパーツから構成される三極管である。真空管が赤く光るのは灼熱するまでヒーターを熱しているからなのだ。
三極管から五極管、ビーム管などが生まれ、さらに進化するにつれて小型化を続けてきた。もちろんオーディオ用としても使われ、小出力なら三極管のシングル、大出力を得るためにビーム管をペアで使うプッシュプルと呼ばれる構成が使われた。近年になって複合管と呼ばれるタイプが登場。これは三極管と五極管を1本にまとめたもので、2本あればステレオアンプが作れる便利なものだ。今回作成するキット「KA-08SE」にも「16A8」という複合管が使われている。
真空管アンプはトランジスタアンプに比べて、軟らかい、温かみがある、なめらかなどと言われているが、その科学的根拠は明らかではない。あなたの手で作って、自分の耳で確かめてみてほしい。
川野氏が今まで作成した真空管アンプ。エレキット、トライオード、サンバレーなどの真空管アンプを多数作成してきた。お気に入りは300Bシングルのザ・キット屋のオリジナル製品「SV-S1616D」。真空管は大きいほど“らしい”音がする真空管は世界各国で作られたため、同じ規格であっても型番が違うものが数多く存在する。現在では、チェコやロシア、中国が主な生産国だが、以前は日本、イギリスやアメリカ、ドイツなどでも作られ、そのメーカーもさまざまだった。有名な真空管には互換品が多く存在し、おもしろいことに挿し換えることで音色が変化する。これを利用して好みの音を追求するのが“球ころがし”である。「16A8」も日本を含む複数の国で作られたことがあり、球ころがしが楽しめる。
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